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0歳からの教育幼児期は「第二言語」を学ぶのに最適な時期であることが分かった
The Bilingual Advantage
生まれたときから英語とスペイン語を経験している子供にとっては両方が母語に LISA5201/ISTOCK
<バイリンガル家庭の子供は言語を混同しやすいという懸念があるが、赤ちゃんの言語経験に「早過ぎる」ことはない。幼い脳は2つの言語を軽やかに処理する>
外国語を学ぼうとしたことがある大人なら誰でも、外国語学習がいかに難しくて混乱するものか分かるだろう。
だから、バイリンガル家庭の3歳児が英語の途中でスペイン語の単語を交ぜようものなら、この子は2つの言語で混乱しているぞ、と考えられるのが普通だった。
しかし、そうではないことが明らかになりつつある。
実は、幼児期は第2言語を学ぶのに最適な時期だ。生まれたときから2つの言語を経験している子供は、一般に両方を母語とするようになる。
一方で、大人は第2言語の学習に苦労し、母語のように流暢に話せることはほとんどない。
赤ちゃんは、生まれる前から言語の音を学び始めている。胎内では母親の声が、最もよく耳に入る音の1つだ。新生児は母親の言語と他の言語の違いを聞き分けるだけでなく、異なる言語を区別できる場合もある。
言語学習の要は、音の処理だ。全世界の言語を合わせると約800種類の音が存在する。1つの言語で使われる音(音素)は約40種類。これが言語間の違いになる。
生まれたばかりの赤ちゃんの脳は、800種類の音を聞き分けられるという貴重な能力を持っている。この段階では、理論上どんな言語でも習得できるのだ。
その後は徐々に、自分がどの音をよく聞いているかに気が付く。
1言語のモノリンガル家庭で育った子供は、生後6カ月から1年の間に母語の音の集合により特化するようになる。そして1歳を迎える頃には、外国語の音の違いを聞き分けることができなくなる。
では、生まれたときから2つの言語を聞いている子供の脳は、2つの言語に特化できるのだろうか。
筆者と共同研究者は、モノリンガル(英語のみ)家庭とバイリンガル(スペイン語と英語)家庭の赤ちゃんの脳が、言語の音を処理するプロセスに注目した。
脳磁図(MEG)という計測技術を使って、スペイン語と英語の音節を聞いているときの脳の活動のタイミングと場所を特定した。
その結果、大半の子供が初めて言葉を発する直前の生後11カ月の時点で、重要な違いが分かった。
まず、英語のみのモノリンガル家庭の子供の脳は、英語の音を処理することに特化して、未知の言語であるスペイン語の音は処理しない。一方で、スペイン語と英語のバイリンガル家庭の子供の脳は、両方の言語の音を処理することに特化していた。
さらに、子供の脳は養育者から聞いた言語に同調する。モノリンガル家庭の子供の脳は1つの言語の音に、バイリンガル家庭の子供の脳は2つの言語の音に同調する。
認知能力の向上で優位に
モノリンガル家庭もバイリンガル家庭も、わが子が最初の言葉を発する瞬間を待ち望んでいる。
そして、子供が言葉を学習するペースが遅いのではないかという不安も共通するものだが、特にバイリンガルの親はその不安が大きい。
私たちの研究では、バイリンガルの赤ちゃんはモノリンガルの赤ちゃんと同じように、英語の音に脳が強く反応した。このことから、どちらも同じ速度で英語を学んでいると考えられる。
バイリンガルの子供を持つ親は、1つの言語で育つ子供ほど語彙が多くないのではないかという不安も覚える。確かに、バイリンガルの幼児は2つの言語を使い分けるため、それぞれの言語で聞く単語数の平均は少なくなる。
しかし、両方の言語を考えた場合、バイリンガルの子供が語彙で後れを取ることはないという研究結果もある。2つの言語を合わせた語彙数は、モノリンガルの子供と同等かそれ以上になる。
バイリンガルは言語を混同しやすいという懸念の一因は、2つの言語を切り替えながら、時に組み合わせて話す「コードスイッチング」にある。
筆者の4歳の息子は英語、スペイン語、スロベニア語を話すが、スペイン語や英語の単語にスロベニア語特有の語尾を付けるときもある。
バイリンガルの子供がコードスイッチングをするのは、周囲のバイリンガルの大人も同じようにしているからだ。
バイリンガルの子供は片方の言語でとっさに適切な単語が出てこなくても、簡単にもう1つの言語に頼ることができる。2歳児でも相手が使う言葉に合わせて自分の言葉を調節する。
コードスイッチングは、バイリンガルの子供の正常な言語発達の一部であり、ランダムではなくルールに基づいて行われる。
この切り替えから、「バイリンガル・アドバンテージ」として知られる優れた認知能力が生まれると考えられている。
世界中の幼い子供に2つの言語を同時に習得する能力があり、実際に習得している。世界の多くの地域で、バイリンガルであることは例外ではなく当たり前なのだ。
常に言語間で注意力を行き来させる必要があることは、認知上のアドバンテージにもつながる。
バイリンガルは大人も子供も、脳の遂行機能を向上させる。注意力やタスクの切り替え、問題解決を、より簡単に処理できる。
バイリンガルの人はメタ言語能力(言語そのものについて考え、その仕組みを理解する能力)が高く、第3言語をより簡単に習得できる。また、2つの言語の経験が蓄積されると、加齢による認知機能の低下やアルツハイマー病の発症を防ぐ効果があるとされる。
子供に複数の言語を習得させたいなら、第1言語を話し始める前の早い時期に始めるのがベストだ。子供が混乱することはなく、言語以外の認知能力の向上にもつながるかもしれない。
Naja Ferjan Ramirez, Research Scientist, University of Washington
This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.
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