米国、そして韓国でも歪んだ社会を映す受験競争 富裕層目指せるのは富裕層だけ?
受験がその後の人生を左右すると言っていいほど重要視されている韓国だけに、修学能力試験、人気私立学校の受験などが映画やドラマの題材としても多く取り上げられてきた。2000年製作のドラマ『真実』は、54.6%という驚異的な高視聴率をたたき出したシリアスドラマだった。日本でも『冬のソナタ』で有名なチェ・ジウが主演しており、実際に起きた受験の替え玉事件などを取り上げて話題となった。
教育熱心な親たちがこぞって子供たちを通わせている塾が立ち並ぶ場所といえばソウルの富裕層が集まる街カンナム区のデチドンがあげられる。筆者が以前通勤していた場所でもあり、残業を終えて夜遅く家に帰る時間、塾が終わった子供たちを迎えに来た親たちの高級外国車が道路に並んでいるのをよく見かけた。『妻の資格』はそんなデチドンを舞台に、加熱する受験競争に疑問をもった中年男女が禁じられた恋に落ちるというドラマだった。
受験競争を描いて社会現象を巻き起こした『SKYキャッスル』
この『妻の資格』と同じケーブル放送局のJTBCが2018年11月から放送を開始し、韓国で社会現象を巻き起こすほど話題になったドラマが『SKYキャッスル』だ。タイトルにある"SKY"は「Seoul・Korea・Yonsei」(ソウル大・高麗大・延世大)という韓国の三大エリート大学を指す略語で、物語は一流大学に子供を入学させたいセレブたちが住む架空の高級住宅地「SKYキャッスル」が舞台となる。
第1話では視聴率が1.7%だったものの、その後回を重ねるごとに話題となり、最終話では23.8%(ソウル首都圏では24.4%)を記録。これは非地上波チャンネル歴代最高視聴率となった。この高評価を受け、もともとは16話完結ドラマだったが4話追加され全20話で構成された。このドラマで注目されたのが入試コーディネーターだ。
医学部教授の夫をもつハン・ソジンは、娘のイェソをソウル大学医学部に入学させるべく、カリスマ入試コーディネーターを数億ウォン(数千万円)払って雇う。この入試コーディネーター、キム・ジュヨンがコーディネートするのは勉強だけではない。イェソの交友関係や、ボランティア活動、学校の生徒会選挙まで一見入試に関係しない部分までプロデュースする。
さて、このドラマで注目された入試コーディネーターだが、こんな職業は実際に存在するのか? そうした視聴者の疑問に対して地上波放送局SBSでは、スペシャル番組として入試コーディネーターは本当に存在するのか、1か月にわたって調査した番組を放送した。ドラマでは入試コーディネーターという肩書きで描かれていたが、実際には存在するのは「メンター」と呼ばれるアドバイザーだ。番組内に登場する父母らのインタビューでは「できるものなら雇用したい」と口をそろえて言っている。
KBSニュースでもこのメンターを取り上げ、入試情報会社では1回の相談だけで料金が数十万ウォン(数万円)と報じた。この会社では受験を控えた子をもつ親を対象に説明会を開催している。実際に現在メンターをしているという人物へのインタビューによると、オンライン上や電話でのサポートは1回高くて29万9千ウォン(約3万円)。実際に対面でのサポートではさらに高額になるという。