『ビートルズ '64』未公開映像、テック系のポール、黒人たちの感想...アメリカ初上陸の舞台裏
Glimpses of the Beatles in 1964
しかし作中で最高に輝いて見えるのは、やはり未公開の映像だ。カメラの存在を(ほとんど)気付かせない「ダイレクトシネマ」の技法で知られるアルバート&デービッドのメイズルズ兄弟がビートルズの東海岸ツアーに同行して撮った貴重な記録だ。
その大部分は既におなじみのものだが、テデスキ監督はトータルで約17分の未公開映像を本作に盛り込んだ。監督が選んだのは、熱狂的なファンから逃げ惑ったり無知な記者たちに冗談を飛ばしたりする4人組ではなく、例えばメイズルズ兄弟の駆使する(当時としては)最新鋭の撮影機材に感嘆するメンバーたちの姿だったりする。
メンバー中で最もテック系なのはポールだ。ある場面では、アルバートのカメラとデービッドのテープレコーダーを、邪魔な接続ケーブルも使わずしっかり同期させる革新的技術に興味津々の様子だ。
ホテルの一室でメンバー4人がコーヒーテーブルを囲んで談笑している場面では、カメラの死角に身を潜めてマイクを突き出している女性スタッフに気付いたポールが、そのカメラを彼女に向けろよと言い出す。もちろんアルバートは拒否するが、ポールが本気なのに気付いて、ついに言われたとおりにする。