「人種の壁」を超えたヒーローたち...大谷とジャッジが示した「多様性の理想」

BRIGHT LIGHTS AND FLICKERING TORCHES

2024年11月14日(木)19時00分
グレン・カール(本誌コラムニスト、元CIA工作員)

newsweekjp20241112043944-3801316a505ca608a71c17dd1aea1456e0dba2ed.jpg

異人種のバックグラウンドを持つア・リーグ本塁打王のジャッジも人間的な魅力と実力でアメリカを熱狂させている USA TODAY SPORTSーREUTERS

父とユダヤ人少年と黒人少年

ワールドシリーズで大谷自身は不調だったが、ロサンゼルス・ドジャースは「憎まれっ子」ニューヨーク・ヤンキースを4勝1敗で下した(ボストン出身の私としては、「憎きヤンキース」と言わないわけにいかないのだ)。

誰もが見たかったのは、ドジャースの大谷とヤンキースのアーロン・ジャッジの対決だ。大谷よりもさらに体格が良いジャッジは「現役最高の野球選手」の称号を争うライバルであり、大谷と同じくらい礼儀正しく、親しみやすく、慎み深い。そのジャッジも、ワールドシリーズはバットが空を切り続けた。


大谷は第2戦で左肩を負傷した後も出場したが、打席では迷っているように見えた。バットはボールの下を擦り抜け、動きはぎこちなく、三振を喫すると耐えるような表情を見せた。シリーズ打率は1割5厘、5三振、本塁打と打点はなし。第3戦以降、走塁の際は左肩をかばうようにユニフォームをつかんでいた。

ジャッジも苦しんでいた。力強く振ったバットは空を切り、スランプから抜け出そうと明らかに力んでいた。シリーズ打率は2割2分2厘、1本塁打、3打点、7三振。ヤンキースが1勝3敗と追い込まれた第5戦の守備では、少年野球のようなエラーでピンチを広げた。2人のヒーローは、それぞれけが人とスケープゴートになった。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ヘッジファンド、トランプラリーに先立ち金融株の保有

ビジネス

パウエルFRB議長、退任後に理事続投するかはコメン

ビジネス

7─9月期実質GDPは前期比+0.2%、年率+0.

ワールド

バイデン氏、APECなど最後の首脳外交へ出発 影落
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:またトラ
特集:またトラ
2024年11月19日号(11/12発売)

なぜドナルド・トランプは圧勝で再選したのか。世界と経済と戦争をどう変えるのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 2
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国」...写真を発見した孫が「衝撃を受けた」理由とは?
  • 3
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラッドレー歩兵戦闘車が「戦略的価値を証明」する戦闘シーン
  • 4
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 5
    NewJeansメンバー全員が事務所に最後通告「ミン・ヒジ…
  • 6
    本当に「怠慢」のせい? ヤンキース・コールがベース…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    NewJeansのミン・ヒジン激怒 「似ている」グループは企…
  • 9
    世界中で「キモノ」が巻き起こしたセンセーション...…
  • 10
    トランプ就任前に少しでもウクライナ領土が欲しい!…
  • 1
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 2
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国」...写真を発見した孫が「衝撃を受けた」理由とは?
  • 3
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラッドレー歩兵戦闘車が「戦略的価値を証明」する戦闘シーン
  • 4
    「歌声が聞こえない」...ライブを台無しにする絶叫フ…
  • 5
    ウクライナ軍ドローン、1000キロ離れたロシア拠点に…
  • 6
    本当に「怠慢」のせい? ヤンキース・コールがベース…
  • 7
    「遮熱・断熱効果が10年持続」 窓ガラス用「次世代…
  • 8
    NewJeansのミン・ヒジン激怒 「似ている」グループは企…
  • 9
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 10
    海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦「空母化」、米…
  • 1
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 2
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 3
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶりに大接近、肉眼でも観測可能
  • 4
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の…
  • 5
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 6
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 7
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア…
  • 8
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 9
    予算オーバー、目的地に届かず中断...イギリス高速鉄…
  • 10
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中