【ネトフリ】財産目当てか、性的虐待か、両親殺害「メネンデス事件」の実録ドラマは見るべきか
A Tasteless Mess
繊細なテーマを無遠慮に
第1の理由は、マーフィーのストーリーテラーとしての力量が不足していることだ。この作品は総じて、悲惨な仕上がりと言わざるを得ない。
例えば、ディナーパーティーが不自然に延々と続くシーン。これはおそらく、ネーサン・レーン演じる雑誌記者に、90年代当時のロサンゼルスの社会的・政治的状況を大まかに説明させるために挿入されたのだろう。
第2の理由は人物描写の難しさだ。視聴者は事件の真相について2つの可能性を示される。兄弟がカネのために冷血に両親を殺害した可能性と、彼らが長年にわたり身の毛のよだつような性的虐待を受けていた可能性だ。
とりわけ兄のライル(ニコラス・アレキサンダー・チャベス)は、悪魔のような人間として描かれたかと思えば、別の場面では気の毒な男の子として描かれる。ところが視聴者には、それぞれの場面で描かれているのがどちらのライルなのかが、すぐに分かるようになっていないのだ。
第3の、そして最も重要な理由は、メネンデス兄弟が実在の人物だということだ。2人は今も刑務所で服役し、潔白を主張し続けている。自分たちはおぞましい虐待の被害者だという主張を変えていないのだ。
そうした繊細なテーマを扱っているのに、マーフィーには慎重さが見られない。いわば地雷原に意気揚々と踏み込んでいき、もし地雷が爆発して爆死しても上等だと思っているかのようだ。