怖くて、楽しい! 36年ぶり続編『ビートルジュース』、死体コスプレの若者が詰めかける熱狂
Good Ghoul! Tim Burton Is Back
前作の登場人物の「その後」を語るフラッシュバック場面があるのは確かだ。リディアの父親、チャールズの悲惨な最期がクレイアニメで描かれるのは気が利いている(本作にはオリジナルキャストの大半が再結集しているが、2003年に性犯罪容疑で起訴されたチャールズ役のジェフリー・ジョーンズは出演していない)。
リディアの継母デリアは、今回もキャサリン・オハラが演じている。かつては継娘とうまくいっていなかったが、リディア自身が10代の娘アストリッド(ジェナ・オルテガ)の母親になった今では、それなりの関係だ。
超常能力を持つリディアはプロの「霊能仲介者」として、幽霊屋敷もののリアリティー番組の司会をしている。少女時代の事件のトラウマが消えない神経質な女性で、恋人のプロデューサー(ジャスティン・セロー)と迷いながらも婚約し、娘にはインチキ霊能者と非難されている。
新たなキャラも登場する。筆頭格がビートルジュースの元妻で、体を切り刻まれて、各部位を木箱にしまい込まれた状態で死後を過ごしてきたドロレスだ(バートンと交際中の国際的スター、モニカ・ベルッチが演じている)。
母と娘の関係が焦点に
ビートルジュースの名前が繰り返されるタイトルにもかかわらず、本作の中心人物はむしろリディアだ。
冒頭のリディアは、人生がうまくいかない理由がよく分かっていない。この作品の真の顔は、心の傷を受け入れる中年女性の物語だ。母と娘の関係に焦点を当て、感傷に陥らずに、母娘の和解を説得力のある形で描き出す。
近所の少年(アーサー・コンティ)と仲良くなったアストリッドが超常的騒動に巻き込まれ、リディアは娘を救うため、ギリシャ神話のオルフェウスのように冥界に下ることになる。この展開は、重大な意味を持つ追跡劇を生み出すだけでなく、シュールな砂漠やディスコダンサーだらけの「ソウルトレイン」が織り成す死後の世界を描写する口実になっている。
基本的には、ツボを心得た続編作品にすぎない本作を褒めたたえるつもりはない。とはいえ、出来は期待以上だ。成功のカギは、優れた演技にある。キートンは不快なビートルジュースに独特のカリスマを吹き込み、オハラは相変わらず素晴らしい。筆者が足を運んだ試写会では、オハラが口を開けば、ほとんどいつでも笑い声が上がった。
試写会には、リディアやビートルジュース、死体に扮したコスプレ姿の若者が詰めかけていた。36年前には生まれていなかった世代がこれほど熱狂できるなら、映画のシリーズ化も悪いことばかりではないと思えてくる。少なくとも、かつてのバートンが復活したことは歓迎したくなるはず。それも、ハロウィーンに間に合うタイミングで......。
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『ビートルジュース ビートルジュース』
監督/ティム・バートン
主演/マイケル・キートン、ウィノナ・ライダー
日本公開中