拍手と共に失笑も買った「原爆の父」...その「複雑な」人間像は、映画『オッペンハイマー』でどう描かれたか?

A Mind-Blowing Tale

2023年8月2日(水)14時27分
フレッド・カプラン(スレート誌コラムニスト)

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アインシュタインを演じるコンティ(左)とマーフィー PHOTOSHOT/AFLO

核分裂や核融合、量子物理学について学べるわけでもない。ただ、ノーランは、スターバーストやブラックホール、「銀河爆発」のような一瞬の映像を表現し、ドラマチックな効果を生んでいる。最初の原爆実験の再現は、驚くほどの没入感がある。

映画は終戦直後のフラッシュバックで終わる。オッペンハイマーがプリンストンの湖畔でアインシュタイン(トム・コンティが好演)と語り合い、自分たちの共同発明がいつか世界を炎に包むのではないかと思案している。

このシーンは原作にはないが、原爆に携わった科学者たちが抱いた罪悪感を効果的に表現している。シラードを筆頭に、核軍縮の熱心な活動家になった科学者もおり、オッペンハイマーも活動に参加している。

ノーランは、この映画を単なる伝記や歴史ドラマで終わらせるつもりはない。7月中旬に行われた試写会後のパネルディスカッションで彼は、今日の科学者は自らの「オッペンハイマーの瞬間」に直面していると語った。特にAI(人工知能)の開発がそうだ。

この新たなテクノロジーも技術的には素晴らしく抗し難いように思えるが、人類がそれを形作る以上に、人類を作り替える可能性がある。

ノーランはまた、水爆は今も存在し、広島以来78年間、大国間の戦争を抑止してきたとはいえ、幸運が永遠に続くとは限らないことを観客に再認識させた。私たちは今なお、オッペンハイマーの時代に生きているのだ。

 
 
 

©2023 The Slate Group

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