映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』見どころ解説──ピーチ姫が頼れるリーダーに変身!マリオ・クッパとの関係の行方は?
Revising a Controversial Part of Nintendo History
一方で、02年の『スーパーマリオサンシャイン』で浮上した疑問はいまだに解決していない。この作品でピーチとマリオはクッパの息子であるクッパJr.に出会う。クッパJr.は自分の母親はピーチだと信じ込んでいる。
それが事実ではないことは、ゲームの終わりではっきりする。だがピーチが自分とクッパとの間に子供がいる可能性について即座に否定しなかったのは、2人がかつて恋人同士だった証拠なのでは──そう勘ぐるマリオファンは多い。07年の『スーパーペーパーマリオ』でピーチは自分たちの世界を守るため、クッパに助力を頼んだりもしている。
必要とされる強い存在に
クッパとピーチの間には一方的ではない恋愛感情が(何ならマリオとの三角関係も)あったという説が、ファンの間には流布している。2次創作サイト「アーカイブ・オブ・アワ・オウン」でも、敵対していたピーチとクッパが恋に落ちる物語が大人気だ。
ファンは2人の対立の裏に引かれ合う心があるのを感じ取っているのかもしれない。あるいは、物語を主体的に動かす力を多少なりともピーチに与えたいというファン心理が存在するのかもしれない。
本作のピーチはこれまでとは大きく違う。公開に先駆けて話題になったのは、リーダーシップを備えたピーチを描こうとしているという点だ。マリオに能力を伸ばす方法を教えるのはピーチだし、先頭に立ってクッパに立ち向かっていくのもピーチだ。
クッパの主な動機は相変わらずピーチとの結婚で、クライマックスでもピーチをさらって、結婚を迫る。だが、このあたりの仕上がりは悪くない。キャスティングが生きてクッパの失恋の悲しみがおかしみに転じているからだ。クッパはピーチへの愛ゆえに80年代っぽいラブソングを歌うのだが、それがジャック・ブラックお得意の熱唱ぶりで、かえって笑いを誘う。
これまで任天堂が、現代的なピーチを描くのにあまり積極的でなかったのは明らかだろう。「クッパが憧れの姫の心を射止めようとする」というパターンから離れる気もなさそうだ。
一方で、任天堂がピーチのキャラクター造形を変えていこうとしていることも間違いない。ピーチの抱く望みやその強さを描くのはもちろん、マリオを必要としているのではなく、マリオに「必要とされて」いる存在として描こうとしているわけだ。
クッパとピーチの恋については......きっと複雑なんだろう、うん。
The Super Mario Bros. Movie
『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』
監督/アーロン・ホーバス、マイケル・ジェレニック
声の出演/クリス・プラット、アニャ・テイラージョイ
日本公開は4月28日
【動画】『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』最終トレーラー(字幕版)
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