坂本龍一と走り続けた40年──音楽業界の重鎮だけが見た天才の素顔
A DRAGON FLYING ABOVE
ワーナーミュージックではピアノに立ち返ったアルバム『BTTB』、大ヒット曲「energy flow」などを出しました。教授は表現者だし、われわれはビジネスサイドの人間。だからこのとき、レーベルの設立をめぐって採算の問題などで齟齬もありました。でも教授は次の日に謝るともう笑顔になっている。引きずらないタイプですよね。
教授にとってピアノは不可分な存在だったけど、音楽性の核には何があったか。いろいろなジャンルを取り込みつつ、それに引っ張られず手繰り寄せる。この自己の強さじゃないでしょうか。才能としか言いようがないけど、坂本家のDNAもあるのでしょう。教授の祖父も父の一亀(かずき)さんも、漂泊の人生でありつつ確信を持って生きたように見えますから。
その一亀さんがこう言ったそうです。「俺は亀のように、地を這(は)うように仕事をしてきた。息子には天に上るような仕事をしてほしいから『龍一』と名付けた」と。
構成・澤田知洋(本誌記者)
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