「1日で20億ドル失った」ブランドにも弁護士にも見限られたカニエ・ウェスト、業界追放か
一連の発言に影響を受け、同調する人が出てきたことも大きい。
ロサンゼルスでは「カニエが正しいと思う人はクラクションを鳴らして」と書かれた横断幕を掲げる人が現れ、ナチス式の敬礼をする集団の様子もSNSに投稿されている。こうした動きをいち早くキャッチしたギャップやバレンシアガは相次いで契約を解消。
そしてついに、15年からイージーとコラボしたスニーカーやアパレルを発売して大成功を収めたアディダスも25日、契約解除すべきとの批判に後押しされる形で「最近の言動は許容できない。憎悪的で危険」との理由から契約の即時停止を発表した。アディダスはこれにより今年、2億5000万ユーロもの損失が出ると言われている。
提携する企業のみならず、所属する大手タレントエージェントのクリエイティヴ・アーティスツ・エージェンシー(CAA)やレコード会社デフ・ジャム(Def Jam)からも関係を解消されている。
また、米銀行最大大手のJPモルガン・チェースは銀行取引の終了を発表し、ファッション誌ヴォーグからも「今後一切仕事をすることはない」と絶縁を通告された。
こうした一連の契約解消に関する交渉や弁護を依頼しようとしていた弁護士からも見放される始末で、業界内での居場所を完全に失いつつある。
元妻キム・カーダシアンも批判
そこにきて、前出の「20億ドルを失った」という投稿になったわけだが、「私はまだ生きている。これは愛のスピーチ。私はまだ、あなたたちを愛している。神は今もあなたたちを愛している。お金が、私が何者であるかを決めているわけではない。私が何者かを決めるのは人々だ」とこの期に及んでも強気の姿勢は崩していない。
アディダスの契約打ち切りで15億ドルを失ったとされるウェストは、反省する間もなく新たな契約先を求めて米大手シューズブランド「スケッチャーズ」の本社をアポなしで訪れたことが発覚。しかしこの現状でウェストと新たにビジネス契約を結ぼうと思うはずもなく、当然のごとく建物から追い出されたと伝えられている。しかも、スケッチャーズはユダヤ一族が経営する会社でもあり、もはやなりふり構っていられる状況ではないことも浮き彫りになった。
ウェストとの間に4人の子供がいる元妻でタレントのキム・カーダシアンは、「ヘイトスピーチは決して許されるものではなく、正当化できない」とツイートし、ユダヤ人コミュニティーへの支持を表明。名前こそ出していないが、これはウェストに対するメッセージであることは明白。
自身の周り全てを敵にまわし、地位も名声も失い、ビリオネアからも転落したウェストが、事の重大さに気付く日は来るのだろうか。
[筆者]
千歳香奈子
北海道・札幌市出身。1992年に渡米し、カリフォルニア州サンタモニカ大学で写真を学ぶ。96年アトランタ五輪の取材アシスタントとして日刊スポーツ新聞社アトランタ支局に勤務。ロサンゼルス支局、東京本社勤務を経て99年よりロサンゼルスを拠点にハリウッドスターら著名人へのインタビューや映画、エンターテイメント情報等を取材、執筆している。日刊スポーツ新聞のサイトにてハリウッド情報や西海岸のトレンドを発信するコラムも寄稿中。著書に『ハリウッド・セレブ』(学研新書)。
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