『イカゲーム』主演のイ・ジョンジェ 遅咲きスターが「カンヌ絶賛」の初監督作を語る
Success Is Not a Game
エージェントのパク・ピョンホ(イ)とキム・ジョンド(チョン)は「対照的な性格だが、互いの姿に自分を見てほしかった」と、イは言う。
両者はあまり言葉を交わさないが、「2人の間に一体感と連帯感があること」を重視した。「2人を1人の人間に融合したかった」
チョンとの共演は、息の合った演技で青春ドラマ『太陽はない』をヒットに導いて以来、24年ぶりとなる。なぜここまで時間がかかったのか。
「彼とはまた一緒にやろうと話していた。共演する企画を何年も探し、共同で脚本まで書いたのに実現しなかった」
イはチョンを「今まさに脂の乗り切った名優」と絶賛し、「監督として、ぜひとも彼に出てほしかった」と語る。「チョン・ウソンはイ・ジョンジェ監督の映画に出たときが一番光っていたと、観客に言わせたいんだ」
熟考の末、舞台は現代に設定した。「今の時代、人はフェイクニュースや誤情報にゆがめられた真実をうのみにし、とかく敵味方に分かれて対立する」
対立を「操り、そこから利益を得ようとする連中」もいるとイは指摘し、「渦中の僕らには、いがみ合うことで何の得があるのか」と問い掛ける。「自分の信じることが本当に正しいのか、僕らは常に確かめなければいけない。この映画では、そうしたテーマも追求したかった」
だが目指したのは「大小のどんでん返しが連なるハイテンションな映画」だという。「スピード感のあるスパイスリラーだが、ストーリーは実に複雑。とにかく楽しんでもらえたらうれしい」
監督としてカンヌで手応えを感じた今も、本業は俳優だとイは考える。「監督するより演じるほうが難しい。演技は僕のアイデンティティーだし、まだまだ俳優としてやりたいことがたくさんある」
次のステップはハリウッド進出か
ショービジネスの世界に入って30年近くがたち、やっと一息つくコツを学んだという。「自分を大事にするようになった。これまでは、何が起きても対処できるよう毎日気を張って生きてきた気がする」
ただし、肩の力を抜くのはなかなか難しそうだ。「経験を積めば積むほど、責任は大きくなる。『イカゲーム』が世界で注目され、韓国の映画やドラマが愛されるようになった今は、以前にも増して責任の重さを感じている」
次のステップはハリウッド進出だろうか。今年、イはクリエーティブ・アーティスツ・エージェンシーと契約した。スティーブン・スピルバーグ、トム・ハンクス、ブラッド・ピット、ウィル・スミスら超大物を顧客に抱える名門タレントエージェンシーだ。
ハリウッドで最も組みたい監督と俳優は誰かと尋ねると、こんな答えが返ってきた。
「多すぎて1人は選べない。だがいつかトッド・フィリップス監督の映画に出て、ホアキン・フェニックスと共演できたら最高だね」