『SATC』も『ソプラノズ』も...超人気ドラマの「続編」はなぜイマイチなのか
The HBO Reboot Problem
『ザ・ソプラノズ』が面白かったのはマフィアの物語だったからではないし、『SATC』が面白かったのは4人の女性がマンハッタンでブランチを楽しむ話だったからではない。視聴者の心に響いたのは語り口が秀逸だったからだ。もちろん、懐かしいキャラクターとの再会はうれしいが、その興奮は長くは続かない。
『SATC』は革新的なヒロイン像が注目されがちだが、絶大な人気の秘密はドラマの構造にもあった。テレビ評論家のエミリー・ヌスバウムは2013年、『SATC』はともすれば軽薄だと見下されるが、その真の姿はセクシュアリティーや女らしさや愛を論じる哲学的ロマンチックコメディーだと書いた。
ブランチの場面は単なるつなぎではなく、ナレーションも添え物ではなかった。いずれも批判精神を発揮する舞台だった。シリーズが進みメロドラマ色が強くなっても、会話やナレーションに潜む批判精神は健在だった。
過去の栄光に頼る過ち
一方、『ザ・ソプラノズ』は逆の問題をはらんでいる。
『ザ・ソプラノズ』はテレビ番組であるからこそ偉大だった。99年から約8年間、地道に回を重ねて連続ドラマというものを辛抱強く作り替えていったから、あれだけの影響力を持てた。キャラクターを流用して2時間の青春映画を作るのは、そんな功績をないがしろにする行為だ。
視聴者を悪党どもに寄り添わせ、派手な暴力沙汰の裏に隠れた退屈で保守的で平凡な暮らしを見せつけた点も、新鮮だった。『ザ・ソプラノズ』はギャング物の常識を塗り替えたが、その前日譚はありきたりなギャング映画だ。
昨年12月、HBOが『シックス・フィート・アンダー』(01~05年)の再始動を計画していることが報じられると、抗議の嵐が起きた。1つには、この番組の最終回が金字塔とたたえられるほど見事だったからだ。ここまではっきり幕を引いてみせたドラマを復活させるのは茶番に近い。
とはいえ『新章』は大ヒットしているし、チェースは『ザ・ソプラノズ』関連で別のスピンオフを温めているという。HBOが昔のお宝をさらに掘り起こしても驚くには当たらない。
これ以上ゾンビを増やさないためには、死人をよみがえらせる企画に時間とカネを注ぎ込むのをやめるのが一番なのだが、見込みは薄い。
『マフィアたち』が公開されると、『ザ・ソプラノズ』は史上最高のドラマか否かを問う声が湧き上がった。こうした議論は何かの始まりではなく終わりを意味する。
テレビという媒体は今も黎明期にある。この手の議論や『新章』のようなリブートは創造の勢いをそぎ、テレビの未来を変えるかもしれない新しい作品からリソースを奪う。
過去の栄光にすがる者は革新のチャンスを逃す。『SATC』や『ザ・ソプラノズ』の傑作を送り出したHBOも、うかうかしてはいられない。
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