最新記事
生物

翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

Rare Shark Covered in Thorns Suddenly Found in Ocean

2024年5月5日(日)13時00分
アナ・スキナー
海中のサメ

写真はイメージです Martin Voeller/Shutterstock

<100年以上前に唯一の標本が失われていたチリ近海のカスザメだが、このほど地元漁師によって偶然捕獲され新研究が始まった>

体の表面がトゲで覆われ、また翼が生えたような奇妙な姿から「天使のサメ」とも呼ばれる希少なカスザメの一種がチリで発見された。絶滅の危機に瀕しているカスザメだが、特にこの種のカスザメが発見されるのは久々で、100年以上ぶりに全面的な研究が行われることとなった。

■【写真】体がトゲで覆われ、翼が生えた?奇妙な姿...チリで発見された超希少な「天使のサメ」

チリ近海に生息するカスザメが初めて記録されたのは1887年だが、研究のベースとなった標本はすでに火災で失われてしまっている。さらに4月25日付の『European Journal of Taxonomy』に発表された新たな研究によると、当初の研究は不完全で不正確なものだったという。

体表がとげのようなもので覆われているのが特徴のこの海洋捕食者は、最初の研究の後も目撃はされており、基本的な情報だけは明らかにされてきた。しかし、全般的な研究が行われたのは今回が初めてだ。

新たな研究のきっかけとなった2匹のオスのカスザメは、チリで漁をしていた漁師が偶然捕獲した。その標本が首都サンティアゴの国立自然史博物館に送られ、100年以上ぶりに全般的な研究が実施された。

2匹のカスザメは体長90センチ以上で、体の背面と頭部が「フック形」のとげのようなもので覆われていると研究者らは説明している。

生息地が脅かされるカスザメの保護政策が急務

現在、カスザメの仲間は24種が確認されている。今回の研究によれば、カスザメは「すべての主要な海洋の大陸棚の、温帯から熱帯の海域」に生息し、体は平たく、サメというよりはエイに似ている。浅い沿岸水域に生息しているため、「漁業、沿岸開発、生息環境の劣化など」人間の活動に大きく影響され、絶滅の危機に瀕していると考えられている。

「カスザメが目撃されることはますます稀になり、本来の分布域から事実上絶滅した種もある」と研究者らは述べ、保護政策が急務であると指摘している。

米海洋大気局(NOAA)によると、カスザメは「待ち伏せ捕食者」で、「獲物が頭上を通過するのを待ってから攻撃する」。主に硬骨魚類、ガンギエイのような底生動物、甲殻類、軟体動物、頭足類を食べるという。

生物の新種は毎年、数え切れないほど発見されているが、消滅または絶滅したと思われていた種が姿を現すこともある。最近では、1800年代にオハイオ州で狩猟により絶滅寸前になった肉食動物のフィッシャーとみられる動物の死体が、同州の道路脇で見つかり、この種が以前の生息域より西に移動していることが示唆された。

20250225issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年2月25日号(2月18日発売)は「ウクライナが停戦する日」特集。プーチンとゼレンスキーがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争は本当に終わるのか

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ユーロ圏総合PMI、2月50.2で変わらず 需要低

ワールド

焦点:低迷するドイツ、総選挙で「債務ブレーキ」に転

ワールド

英国、次期駐中国大使に元首相首席秘書官が内定 父は

ビジネス

独総合PMI、2月は9カ月ぶり高水準 製造業が3カ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 9
    ハマス奇襲以来でイスラエルの最も悲痛な日── 拉致さ…
  • 10
    トランプ政権の外圧で「欧州経済は回復」、日本経済…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 8
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 9
    週に75分の「早歩き」で寿命は2年延びる...スーパー…
  • 10
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 6
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 7
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中