ホームレスとハウスレスは別──車上生活者の女性を描く『ノマドランド』の問いかけ
Meditating the Meaning of Home
まだ38歳のジャオはいわば映画の神童だ。自身の技量をあらゆるレベルで使いこなしている。それぞれの人物の人生と照らし合わせて脚本を書き、撮影中に交わした会話に基づいてほぼ毎日変更を加え、編集(無言劇に近い一連の場面を極めて感動的なストーリーに織り込んだその手法は、本作の技術面での見せ場の1つだ)も自ら手掛けた。
ファーンはあるとき、映画館の前を通りかかる。上映中の作品は、マーベルのアクション映画『アベンジャーズ』。ジャオの次作が、アンジェリーナ・ジョリーら有名俳優が結集するマーベルの超大作『エターナルズ』(今年公開予定)であることに目配せした内輪ネタのジョークだ。
好奇心を込めて対象を見据えるジャオのカメラが、CG用背景幕の前で演技するジョリーに何を見いだすのか。答えはまだ謎だ。だが『ノマドランド』はジャオの「スーパーパワー」を証明してみせた。
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