「オタ活」がはらむリスクに無自覚な若者たち──オタクコミュニティの残念な現実とは
オタクの中にはお金を支出することが美徳であると考える層が存在する。彼らは消費による自己満足を追求しており、自身の経済的・時間的制約の中で購買欲求を常に充足しようとする。
コンテンツ市場で消費されているモノの多くは、一般消費財市場とは対極的で、贅沢品市場に性質が似ている。珍しいグッズやイベントほど希少価値が高く、価値も高騰する。その結果、購入する際の倍率も上がるため、購入機会を死守するために、他のオタクを排除しようとするオタクも存在する。
昨今よく耳にするようになった、自分の方が優位と思いたいが故に、自分の方が立場が上であるとアピールする「マウンティング」が良い例である。消費することがコンテンツ愛に繋がると考える層は、他のオタクに対して経済力でマウントをとる。その対象は若年層のオタクも含まれており、消費を煽ったり、消費する経済力がないことに劣等感を抱かせるような発言をする。
オタクを自称することがアイデンティティとなっている多くの若者は、このようなオタクが存在していることや、オタクを自称することのリスクを認識していない。その結果、コンテンツコミュニティに対して、自身が抱いていたイメージと差異が生じ、他のオタクとコミュニケーションをとることをやめてしまったり、最悪の場合はそのコンテンツから離れてしまうこともあるのである。
さいごに
このような若者のオタクを大きな器で受け入れることが、コンテンツ消費の人口を増やし、コンテンツを継続させることに繋がるわけだが、コンテンツコミュニティの全てのオタクが若者のオタクに対して寛容なわけではない。そのため、コミュニティにオタクを名乗って参入する若者のオタク自身が上述のリスクを十分に認識して自衛する必要があると筆者は考える。
せっかくコンテンツに関心を持った若者が、他のオタクの排他的な行動のせいでそのコンテンツのことを嫌いになるようなことが、可能な限り無くなっていくことを願うばかりである。
[執筆者]
廣瀨 涼
ニッセイ基礎研究所
生活研究部 研究員
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