最新記事

カルチャー

「オタ活」がはらむリスクに無自覚な若者たち──オタクコミュニティの残念な現実とは

2021年1月4日(月)16時40分
廣瀨 涼(ニッセイ基礎研究所)

オタクの中にはお金を支出することが美徳であると考える層が存在する。彼らは消費による自己満足を追求しており、自身の経済的・時間的制約の中で購買欲求を常に充足しようとする。

コンテンツ市場で消費されているモノの多くは、一般消費財市場とは対極的で、贅沢品市場に性質が似ている。珍しいグッズやイベントほど希少価値が高く、価値も高騰する。その結果、購入する際の倍率も上がるため、購入機会を死守するために、他のオタクを排除しようとするオタクも存在する。

昨今よく耳にするようになった、自分の方が優位と思いたいが故に、自分の方が立場が上であるとアピールする「マウンティング」が良い例である。消費することがコンテンツ愛に繋がると考える層は、他のオタクに対して経済力でマウントをとる。その対象は若年層のオタクも含まれており、消費を煽ったり、消費する経済力がないことに劣等感を抱かせるような発言をする。

オタクを自称することがアイデンティティとなっている多くの若者は、このようなオタクが存在していることや、オタクを自称することのリスクを認識していない。その結果、コンテンツコミュニティに対して、自身が抱いていたイメージと差異が生じ、他のオタクとコミュニケーションをとることをやめてしまったり、最悪の場合はそのコンテンツから離れてしまうこともあるのである。

さいごに

このような若者のオタクを大きな器で受け入れることが、コンテンツ消費の人口を増やし、コンテンツを継続させることに繋がるわけだが、コンテンツコミュニティの全てのオタクが若者のオタクに対して寛容なわけではない。そのため、コミュニティにオタクを名乗って参入する若者のオタク自身が上述のリスクを十分に認識して自衛する必要があると筆者は考える。

せっかくコンテンツに関心を持った若者が、他のオタクの排他的な行動のせいでそのコンテンツのことを嫌いになるようなことが、可能な限り無くなっていくことを願うばかりである。

Nissei_Hirose.jpeg[執筆者]
廣瀨 涼
ニッセイ基礎研究所
生活研究部 研究員

20241126issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ大統領、防空強化の必要性訴え ロ新型中距

ワールド

イスラエルがガザ空爆、48時間で120人殺害 パレ

ワールド

大統領への「殺し屋雇った」、フィリピン副大統領発言

ワールド

米農務長官にロリンズ氏、保守系シンクタンク所長
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 5
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 6
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    2人きりの部屋で「あそこに怖い男の子がいる」と訴え…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中