最新記事

ジョンのレガシー

現代のセレブも使うジョン・レノン式成功モデル【没後40周年特集より】

HIS OTHER LEGACY

2020年12月8日(火)11時15分
本誌米国版編集部

皮肉屋 ジョンは自らの名声を冷ややかに見ていた(1971年)AP/AFLO

<偉大な音楽以外に彼が残したレガシーは、周囲の言うがままに踊らされる有名人から脱却して名声を「道具」にしたことだ。本誌「ジョンのレガシー」特集より>

20世紀における最も革新的なミュージシャンの1人であるジョン・レノンは、名声という渦の中で人生を切り開いたパイオニアでもあった。

名声を追い求め、それについて語り、利用し、一旦は距離を置いたジョンは、最後には肥大した名声にのみ込まれた。その過程で彼は、スターダムとは何なのか、それはどのような影響力を持ち得るかを私たちに教えた。
20201215issue_cover200.jpg
亡くなる3日前、ジョンは妻ヨーコと共にローリングストーン誌のインタビューに応じ、「僕らの人生は僕らのアートだ」と語っていた。リアリティー番組以前の時代には新しい考え方だった。だが人生とアートの境目が本当に希薄になった今こそ、ジョンの名声との付き合い方がもたらした教訓は再検討する価値がある。

若き日のジョンはリバプールやハンブルクの汚い楽屋で、ビートルズの他のメンバーをあおったものだ。「俺たちが目指すのはどこだ?」とジョンが問い掛け、ポールとジョージとリンゴが「ポップス界のてっぺんだ!」と応える。これを2年ばかり続けた頃、彼らは本当にてっぺんを極めた。

スターダムの大きな渦に巻き込まれたジョンにとって、皮肉は身を守る手段だった。同時にそれは、彼の魅力の源泉となった。ジョンは当初から自らの名声を、一歩引いたところから面白がって観察していた。自分が体現することになった新しい形のヒステリックなスターダムを斜めから見て分析を加え、冷笑するような面があった。

1963年11月、英王室のメンバーが臨席するチャリティーイベント「ロイヤル・バラエティー・パフォーマンス」に呼ばれると、ジョンはもちろん承諾した。

しかし大げさなおじきをしたり、最後の曲の前にこんな皮肉を言うことも忘れなかった。「安い席の皆さんは手拍子を。残りの方々は、宝石をじゃらじゃら鳴らしてください」

翌64 年2月にビートルズがアメリカに初上陸したとき、ニューヨークのケネディ国際空港で行った記者会見でも同じだった。ジョンが終始リードしたこの会見は、自己宣伝への皮肉に満ちていた。

記者「何か歌ってくれませんか」
ジョン「先にお金をもらえる?」
記者「なぜこんなに人気が出たと思いますか」
ジョン「それが分かっていたら、別のバンドを作ってマネジャーをやってるさ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏「米中が24日朝に会合」、関税巡り 中国

ビジネス

米3月耐久財受注9.2%増、予想上回る 民間航空機

ワールド

トランプ氏、ロのキーウ攻撃を非難 「ウラジミール、

ビジネス

米関税措置、独経済にも重大リスク=独連銀総裁
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは?【最新研究】
  • 2
    日本の10代女子の多くが「子どもは欲しくない」と考えるのはなぜか
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 5
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    「地球外生命体の最強証拠」? 惑星K2-18bで発見「生…
  • 8
    謎に包まれた7世紀の古戦場...正確な場所を突き止め…
  • 9
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 10
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 9
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 10
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中