BTSブームも牽引、Kポップダンスを陰で支える振付師
BEHIND K-POP'S VIRAL CHOREOGRAPHY
NYのタイムズスクエアでパフォーマンスをするBTS AP/AFLO
<Kポップの魅力の1つは計算し尽くされたダンスだが、その戦略に貢献しながら注目されていない真の功労者がいる>
Kポップは歌と魅惑的な雰囲気とアイドル性だけでなく、高度な振り付けのシンクロダンスでも知られている。しかし、その振り付けには爆発的なブームを生む力があるにかかわらず、グローバルな人気を支える振付師は業界でないがしろにされている。
Kポップグループの公式ミュージックビデオ(MV)の大半には、「公式振り付けMV」や「パフォーマンスビデオ」が付いている。BTS(防弾少年団)など多くのグループは、振り付け関連の動画の数が公式MVを上回る。
各曲にもそれぞれダンスの練習映像があり、メンバーがスタジオで踊る姿が収められている。固定カメラで撮影されたシンプルな動画で、まねして練習しやすいように、反転させたミラーリング動画をファンたちが作っている。
このダンス動画が大きな武器になる。その威力をまさに体現しているのがBTSだ。例えば、アメリカを拠点とするキーオン・マドリッドが振り付けを担当した「Fire」は、公式MVのYouTubeの再生回数が6億6000万回、ダンスの練習動画が5600万回、ライブパフォーマンスが9700万回、ミラーリングダンスの練習用動画が8100万回。1曲の動画4本で計8億9000万回以上、視聴されている。
(BTS「Fire」の練習動画)Kポップの全ての曲が、「Fire」のように世界的なヒットになるわけではない。しかしダンス動画のフォーマットが持つ可能性は、より柔軟な戦略に対応できる。BTSも、例えば「Save Me」は、公式MVはあるがダンス練習動画はない。「Silver Spoon」は公式MVはないが、ダンス練習動画の再生回数は3300万回、ミラーリングダンスの練習用動画は1億5000万回を超えている。
練習映像とミラーリングダンスの再生回数の差は、ファンが振り付けを見るだけでなく、自分たちも練習してさらに楽しんでいることの表れかもしれない。その好例が「ランダム・プレイ・ダンス・チャレンジ」だ。これはKポップの曲がランダムに流され、振り付けを知っている参加者が自由に踊るイベントで、台湾やアメリカなど各地で開催され、多くのファンを集めている。
ダンスチャレンジの発祥は、韓国のトーク番組の人気コーナー「ランダム・プレイ・カッツ」だ。出演者の曲の一部が突然流れて、メンバーがぶっつけ本番で踊りだす。
大規模なイベントだけではない。ベトナムやブリュッセル、オーストラリアなど世界各地から、街中で振り付けを忠実に再現する動画「Kポップ・イン・パブリック」が投稿され、数百万回の再生回数を記録している。
Kポップのグループは、ダンスチャレンジを積極的に仕掛けている。BTSの大ヒット曲「IDOL」の公式MVの再生回数は、わずか4カ月で3億1200万回を記録。大物ラッパーのニッキー・ミナージュをフィーチャーしたバージョンは、「#アイドル・チャレンジ」と題してソーシャルメディアでダンス動画の投稿を募ったプロモーションも絡めて1億回に達している。
(BTS「IDOL」)昨年9月にはBTSのリードダンサーとして知られるJ−HOPEが、人気ポップシンガーのベッキーGとのコラボで、2006年の大ヒットナンバー「Chicken Noodle Soup」のリメーク版を発表。「チキンヌードルスープ・チャレンジ」の下で、著名な振付師によるリメークやカバーが続々と生まれた。