『オフィシャル・シークレット』イラク戦争直前に米英の嘘をリークした元諜報機関員が語る「真実」
A Timely Whistleblower Story
映画の重要なシーンの1つで、ある単純なミスから、ガンとブライトは危機に直面する。オブザーバー紙の編集アシスタントがメモを転記した際に、アメリカ式のつづりをイギリス式に書いてしまったのだ。米保守系政治ニュースサイトのドラッジ・リポートはこれをネタに、メモの信憑性を攻撃する。映画は事実と少々異なる点もあるが、「残念ながらかなり近い」と、ブライトは言う。「その気の毒な女性は実在する。入社してまだ2週間だったから、彼女にとって本当に恐ろしい出来事だった。今では『フェイクニュース』と呼ばれるものとして、ドラッジ・リポートから攻撃されたことも事実だ」
もっとも、映画ほど劇的な展開ではなかった。映画では、ブライトと編集長が編集室にいるときにこのミスが発覚し、国外メディアのインタビュー取材が相次いで中止となる。しかし実際は、「基本的に電話でのやりとりだった。(記事が掲載された)日曜版の編集部は、日曜日と月曜日が休みだった」
ドラマを盛り上げるために小さな装飾はあるが、『オフィシャル・シークレット』は「いかなる形でも真実を勝手に書き換えて」はいないと、ブライトは語る。
「ギャビンは本当に大変だったと思う」と、ガンは言う。「普通の表現方法とは違っていたから。彼が私に話を聞いていて、最初にこれはかなり難しいと気が付いたのは、多くのことが私の頭の中だけにあったと分かったとき。私が考えて、私が感じたことばかりだった。彼は『どうすればこれを映像にできるんだ?』と考え続けた」
法廷で語れなかったこと
「問題のメールを私たちが読んで議論するシーンは、実際にはなかった。(実際は)私はメールを見てすぐに思ったの。『何てこと、ひど過ぎる』。ギャビンが(話し合いのシーンを)追加したのは、私の思考プロセスを共有するためでしょう」
クライマックスの演出も難題だった。ガンは徹底的に追い込まれながら、結局、起訴は何の前触れもなく取り下げられた。
「フィクションとして描くなら、最後の法廷の場面はもっと長くなるはずだ。でも、現実の意外なほどあっけない結末にも、みぞおちにこぶしを食らうような重みがある」と、フッドは言う。「ただし、彼女とベンは、正式な記録が残る場で自分たちの無実を証明する機会を与えられなかった。ここから先はジャーナリズムの問題だ。起訴を取り下げた本当の理由を法務長官と検察幹部に直接、問いただすつもりがあるのか、と」
OFFICIAL SECRETS
『オフィシャル・シークレット』
監督╱ギャビン・フッド
主演╱キーラ・ナイトレイ、マット・スミス
日本公開は8月28日
<本誌2020年9月1日号掲載>
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