最新記事

エンターテインメント

コロナ禍で快進撃続くネットフリックス それを支える翻訳業界の裏側とは?

2020年7月24日(金)19時30分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネイター)

ネットフリックスの会員増加で映像の翻訳会社も仕事が増えている。写真はネットフリックスの韓国語版吹き替えのようす。MBCNEWS / YouTube

<エンタメ業界がコロナ禍で苦境にあるなか、ネットフリックスとそれを支える翻訳業界は売上を伸ばしている>

新型コロナウイルスの感染拡大後、全世界のエンターテインメント業界が大きな打撃を受けている。そんななか、OTT(Over The Top=ネット配信サービス)業界、特にネットフリックスは自宅隔離のお供として加入者数も増え、コロナ禍でも一人勝ちが続いているが、その好景気は他のエンターテインメント関連業界にも良い影響を与えているようだ。

今年、『愛の不時着』『梨泰院クラス』をはじめとする空前の韓国ドラマブームが巻き起こった。この火付け役はネットフリックスであり、コロナ禍の巣ごもり生活とこれらの作品の配信開始のタイミングがぴったり合ったことが成功の要因だと言われている。

OTTの強みは、世界に配信が可能である点だ。今まで全く知らなかった外国の作品にも手を出しやすくなり、想像していなかった作品に出合える楽しさがある。そこでもっとも重要になってくるのが字幕や吹替である。

コロナ禍でネットフリックス契約が20倍に伸びた韓国

お隣の国・韓国では、コロナ禍を経てネットフリックス加入者は637万名。約20倍に伸びたと言われている。日本のように映画館が全面休業しなかったのにもかかわらず、それだけ多くの人たちが外出を控え、家でエンタメを楽しむようになっていた。

ネットフリックスもそれに応えるかのように、配信コンテンツの量を急速に増やしている。韓国映像物等級委員会のここ4年分データを見ると、ネットフリックスが韓国に配信するためにセンサーシップ・レーティング(注)を要請した外国の作品数は、2016年には1226件/年だったが、2019年は1494件/年となって268件も増えた(注:韓国では映画やテレビ番組について、制作者が視聴対象年齢を設定したうえで、日本の映倫のような「映像物等級委員会」が審査する)。

ちなみに、ここ4年間のネットフリックス・コリアのコンテンツ数は合計5553作品だ。これは、韓国の同時期4年間の総作品数合計1万1414作の、なんと48.7%がネットフリックスのコンテンツだったということになり、その量の多さに驚かされる。韓国国内でケーブルTV局が開局する際、平均130作程度のコンテンツを準備すると言われている。ネットフリックスは配信開始時から古今東西の約1500作のコンテンツを準備していたというわけだ。これだけ外国から配信作が入ってくるということは、それだけ翻訳字幕も必要となってくる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ミャンマー地震の死者1000人超に、タイの崩壊ビル

ビジネス

中国・EUの通商トップが会談、公平な競争条件を協議

ワールド

焦点:大混乱に陥る米国の漁業、トランプ政権が割当量

ワールド

トランプ氏、相互関税巡り交渉用意 医薬品への関税も
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジェールからも追放される中国人
  • 3
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中国・河南省で見つかった「異常な」埋葬文化
  • 4
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 5
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 6
    なぜANAは、手荷物カウンターの待ち時間を最大50分か…
  • 7
    不屈のウクライナ、失ったクルスクの代わりにベルゴ…
  • 8
    アルコール依存症を克服して「人生がカラフルなこと…
  • 9
    最古の記録が大幅更新? アルファベットの起源に驚…
  • 10
    最悪失明...目の健康を脅かす「2型糖尿病」が若い世…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えない「よい炭水化物」とは?
  • 4
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 7
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 8
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 9
    大谷登場でざわつく報道陣...山本由伸の会見で大谷翔…
  • 10
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中