韓国、Netflix急成長にタダ乗り議論で法改正 政府は韓国版Netflix育成を宣言
韓国政府は2022年までにネットフリックスのような世界で通用するグローバルなOTT会社を育成するというが…… Wachiwit / iStockphoto
<ドラマや映画そして音楽といったコンテンツで世界に進出した韓国だが、それらの配信サービスにも力を入れようと動き出した......>
ネットフリックスといえば、定額料金で映画やテレビ番組のコンテンツが見放題というサブスクリプション型OTT(Over The Top=ネット配信サービス)のトップを走るプラットホームだ。今年のコロナ禍による世界規模での巣ごもり生活でも、映画館に出かけられない多くの人がネットフリックスに助けられたのではないだろうか。
そのネットフリックスが4月に発表した2020年1~3月期の報告書によると、純利益は7億906万ドル にも上り、これは前同期の2.1倍で、過去最高額を更新したそうだ。
そんななか、韓国では通称「ネットフリックス法」と呼ばれる法律が誕生した。この法律ができた背景には一体何があったのだろうか?
タダ乗り禁止のための法整備
ネットフリックスは、韓国でのサービス提供にあたって通信会社SKのブロードバンド通信網を無料で使用している。一方で韓国国内のコンテンツ事業社は、通信事業社に過度なトラフィックを誘発する場合は、インターネット網の品質を維持するために必要な費用として「網使用料」を各社負担している。
このため韓国内の代表的コンテンツ事業社であるネイバーやカカオなどは、通信事業社に毎年数百億ウォンにも及ぶ網使用料を払っているが、アメリカに本社があるネットフリックスはSKの通信網を利用しながら、この使用料を1ウォンも出しておらず、数年前から問題となってきた。
ネットフリックスの韓国内での利用者は過去3年間で12倍以上に増え、4月時点の月間利用者数は637万人という。これほどの人気を集めれば集めるほど、アクセスする人は増え、ネット上のトラフィックが増し、SKは今年に入って既に4回も設備増強に追われた。止むに止まれず、SKはネットフリックスに最小限の使用料金の支払いを求めたが、なんとネットフリックスはこれに対し支払うどころか、ソウル地方裁判所にSKを相手取り「債務不存在確認」の訴訟を起こしている。
この訴訟が起こされた翌5月に、韓国政府は「電気通信事業法」を改訂し、"コンテンツ事業社が網安全性維持に努める"という一文を、"過度なトラフィックが発生した時、コンテンツ事業社も網使用料を負担する"という表現に書き換えた。これで、今後高額な網使用料の請求がきても、SKはネットフリックスに支払いを求めることができるようになるというわけだ。これがいわゆる「ネットフリックス法」である。