泥沼の離婚劇『マリッジ・ストーリー』にスター俳優2人が命を吹き込む
Superb Performances in Divorce Drama
だが『マリッジ・ストーリー』を見る限り、そこに至るまでの過程は平坦ではなかったようだ。チャーリーとニコールは、バームバックが「離婚産業」と呼ぶものに大きく翻弄されることになる。
もともとロサンゼルス出身のニコールは、ヘンリーを連れて母親と姉の家族がいる西海岸に戻り、テレビ界でキャリアを積もうと考える。一方、チャーリーは劇団のブロードウェイ公演が決まったこともあり、ニューヨークを離れるつもりはない。
2人は当初、さほど大きな共同財産もないとして、法的手段に訴えたりせず、友好的に離婚をまとめようとする。ところがひょんなことから、この分野でやり手の弁護士を雇うことになり、離婚協議はたちまち泥沼化していく。
なかでも激しい対立点となるのは、ヘンリーの親権問題だ。弁護士は依頼人を勝たせるために、相手が親として不適格であることを示す「証拠」を突き付ける。チャーリーとニコールは、自分が弁護士に語った内容が相手を傷つける形で次々と暴露されることに罪悪感を覚える一方で、互いに引くに引けなくなる。
子供の親権争いが焦点になる離婚劇というと、真っ先に思い出すのは1979年公開のアカデミー賞受賞作『クレイマー、クレイマー』だろう。メリル・ストリープ演じる母親は、夫と子供を置いて家を出るという「母親らしくない行動」を法廷で徹底的に責められる。
『マリッジ・ストーリー』では離婚の決定的な原因は明らかにされないが、どちらかといえば、チャーリーは妻の夢より自分の仕事を優先する自己中心的な夫として描かれる。
演技もルックスも圧倒的
とはいえ、ニコールが実家の温かい環境に落ち着くのに対して、チャーリーが息子の共同親権を勝ち取るためにロサンゼルスに通い、小さなアパートを借り、家庭調査官に好印象を与えようと奮闘する姿にはつい同情してしまう。
バームバックの細やかな脚本に命を吹き込んでいるのは、こうしたドライバーとヨハンソンの迫真の演技だ。
もちろん、2人のルックスが非常に魅力的なのは間違いない。何しろ『スター・ウォーズ』のカイロ・レンと、『アベンジャーズ』のブラック・ウィドウの夫婦だ。チャーリーとニコールがまだ同居していたとき、帰宅した2人を出迎えたベビーシッターが、「ワオ、あなたたちって本当にカッコいいカップルね」と口走るシーンがあるが、多くの観客も同感だろう。