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「モンパチ」の歌に乗せて──『小さな恋のうた』が描くリアルな沖縄

A Little Love Song

2019年5月24日(金)16時10分
石戸 諭(ノンフィクションライター)

とはいえ、映画にあるのは悲壮感だけではない。躍動感あるライブシーンなど音楽の力で、フェンスに象徴される分断を乗り越えようとする前を向く若者たちの姿が映し出される。

沖縄を代表するロックバンドにして、今なお歌い継がれる名曲を多数生み出したモンパチことMONGOL800の代表曲「小さな恋のうた」から取ったタイトルも印象的だ。モンパチは高校の同級生3人で結成されたバンドで、山城は彼らの後輩だった。

「モンパチの歌も、沖縄の歴史や現実から逃げてないですからね。(映画の中の)基地問題の描き方には当然、批判もあると思います。だけど、僕はモンパチの音楽の力も借りながら、日本中の無関心な人にこそ届けたいと思ったんです。沖縄には大変なこともあるけれど、やっぱり前を向きたい、と」

この楽曲についての映像制作だけは断ってきたというモンパチがOKを出したのは、山城が後輩だからではなく、企画を貫く哲学に共鳴したからだろう。

映画は「面倒くさそう」から始まる沖縄への無関心にくさびを打ち込み、「真面目に語る」だけでは届かない層に音楽の力で関心を呼び込む。沖縄の新しい語り方が、ここにある。

<本誌2019年05月28日号掲載>

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※5月28日号(5月21日発売)は「ニュースを読み解く哲学超入門」特集。フーコー×監視社会、アーレント×SNS、ヘーゲル×米中対立、J.S.ミル×移民――。AIもビッグデータも解答不能な難問を、あの哲学者ならこう考える。内田樹、萱野稔人、仲正昌樹、清水真木といった気鋭の専門家が執筆。『武器になる哲学』著者、山口周によるブックガイド「ビジネスに効く新『知の古典』」も収録した。

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