スピルバーグ的ゴジラの成功術
テーマも演出もキャラ作りも巨匠のヒット作を思わせる新生『GODZILLA』
オマージュ ゴジラが登場するタイミングにもスピルバーグの影響が見える © 2014 Warner Bros. Entertainment Inc. & Legendary Pictures Productions LLC
映像作家のアンソニー・トロンベッタは『GODZILLA ゴジラ』の予告編音声に、スティーブン・スピルバーグ監督の『ジョーズ』の映像を重ねた。『ジョジラ』のタイトルで発表されたこの動画、映像と音が意外なほどマッチしていて面白い。予告編音声に『ジュラシック・パーク』の映像をかぶせた動画もある。
こうしたマッシュアップに違和感がないのには、理由がある。5月16日に全米公開された『GODZILLA』は言うまでもなく、54年の本多猪四郎監督による『ゴジラ』から始まったシリーズの最新作。だがその本質はスピルバーグ映画のクローンであり、『ジョーズ』や『未知との遭遇』のDNAを分析し、再構築したものだ。
この手の映画の成否は、怪獣が初めて全貌を現すシーンに懸かっている。その瞬間、観客が恐怖に息をのまなければ、怪物級の失敗作ということだ。
今回、ゴジラが登場するのは上映開始から約60分後。『ジョーズ』の人食いザメは62分、『ジュラシック・パーク』のティラノサウルスは64分後だった。
観客のじらし方も似ている。上映開始から1時間、海上には人食いザメよろしく、ゴジラの背びれがちらちらと見えるだけ。ギャレス・エドワーズ監督もこの演出は『ジョーズ』をヒントにしたと認めた。
スピルバーグ作品との共通点は、ほかにも山ほどある。エドワーズと脚本のマックス・ボレンスタインによれば、主人公フォード(アーロン・テイラージョンソン)とその父ジョー(ブライアン・クランストン)の名字「ブロディ」は、『ジョーズ』のブロディ警察署長から取ったものだ。
『未知との遭遇』との類似点
もっとも、ジョーのキャラクターは『未知との遭遇』の主人公ロイに近い。2人とも発電所に勤める技術者で、謎の停電の原因究明に取りつかれる。停電中に不思議な出来事に遭遇したのをきっかけに言動がおかしくなり、突飛な仮説を組み立てて家庭内で孤立する。
その後に繰り広げられる息子との葛藤は、やはりスピルバーグ作品の定番テーマだ(『宇宙戦争』『インディ・ジョーンズ』シリーズなど)。