最新記事

映画

『ストラッター』のオフビートな懐かしさ

ロック愛にあふれる、ユーモラスな青春映画を完成させたアリソン・アンダース監督に聞く

2013年9月17日(火)13時44分
大橋 希

突っ走れ! ロッカーのブレットは「砂漠のツアー」に旅立つ ©2012 Alison Anders and Kurt Voss

 愛する彼女に突然振られ、バンドは解散の危機......失意のロッカーの憂鬱で甘酸っぱい日々をつづった映画『ストラッター』が日本公開中だ。

 ロック好きにはたまらない要素があふれ、モノクロ映像とカメラワークにどこか懐かしい感じが漂う作品だ。総製作費2万5000ドルという低予算で、有名監督らの協力を得て作られたという。共同監督・共同脚本を務めたアリソン・アンダースに聞いた。

──『グレイス・オブ・マイ・ハート』『シュガータウン』など、あなたの作品は音楽を題材にしたものが多い。テーマとして引かれるのはなぜか。

 音楽やミュージシャンは、すごく想像力をかきたてる存在だと思う。ミュージシャンたちの物語って本質的におかしくて、悲しくて、複雑。だから引かれてしまう。

──音楽はあなたの人生にとってどんな存在?

 私はいつも音楽を聴いている。本当にいろいろなジャンルの音楽。最近はロックンロールのルーツになった40、50年代の音楽をよく聴いている。R&Bやヒルビリー、スタンダード、ジャズ、フォークなんかね。

 60年代の音楽が大好きで、それが自分の出発点になっている。私の娘ティファニーはミュージシャンで、この映画では音楽監督を務めている。彼女から新しい音楽でも古い音楽でも、素敵なものをいろいろと教えてもらっている。

──主人公のブレットはじめ、出演者はほとんど友人だとか?

 新人の俳優と仕事をしたり、ミュージシャンに演技をしてもらうのが私は好きなの。彼らが映画に出てくれると、なにかすごく斬新なことが起こる気がする。

──92年の『ガス・フード・ロジング』(92年)はすごく印象的な映画だった。ただ、最近のあなたはテレビ界での活動が多い。前作『シングス・ビハインド・ザ・サン』から『ストラッター』まで10年以上も空いているが。

 ずっと映画を作るための資金を集めをしようとしてきたけど、私たちが90年代に作っていたような小さな作品を撮ることは今はずっとずっと難しくなっている。

 私は自分のことを映画監督というだけでなく、ストーリーテラー(物語作家)だと思っている。だから人物像を深く掘り下げ、物語を伝えることができるなら、テレビでもインターネットでも構わない。

──制作資金は主に、ネットを通じて多数の支援者から資金を募る「クラウド・ファンディング」で集めたとか。

 ほかの方法では資金集めが難しいプロジェクトを実現するのに、クラウドファンディングは本当に素晴らしい方法だと思う。(出資金の使い道は任せてもらえるので)自分の仕事を自分でコントロールできるのもいい。

 唯一の欠点は、自分はただ働きになること。でもその一方で、出来上がった映画は自分のものだから、それを売ったお金は手にすることができる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ミャンマー地震、死者1700人・不明300人 イン

ビジネス

年内2回利下げが依然妥当、インフレ動向で自信は低下

ワールド

米国防長官「抑止を再構築」、中谷防衛相と会談 防衛

ビジネス

アラスカ州知事、アジア歴訪成果を政権に説明へ 天然
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...スポーツ好きの48歳カメラマンが体験した尿酸値との格闘
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    最古の記録が大幅更新? アルファベットの起源に驚…
  • 5
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 6
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 7
    「炊き出し」現場ルポ 集まったのはホームレス、生…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 10
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 5
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 6
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 7
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中