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『ソーシャル・ネットワーク』製作の裏側

2011年1月17日(月)14時30分
大橋 希(本誌記者)

──リサーチはどうやって?

 まずマークの書いたブログや大学新聞など、誰でも読めるものを調べた。それからこれは入手がなかなか難しいものだが、裁判の宣誓証言をはじめとするさまざまな法的書類を集めた。(マーク以外の)関係者への取材も行った。宣誓証言では被告のマーク、証人、原告がすべて違う話をしているのが興味深かった。だからこの映画は、私の好きな『羅生門』のように複数の視点から構成しようと思ったんだ。

──マーク本人は「現実と同じなのは衣装だけ」と言っているが。

 私がマークなら、自分の視点だけで物語を語ってほしいと思うだろう。でもここには彼を訴えた人々の視点も加わっているからね。

──女性の登場人物は飲んで騒いで、痴態をさらすグルーピーのような人ばかりだ。男たちの世界を描くために意図的にそうしたのか。

 マークにとって、女性は「トロフィー」か「敵」のどちらかだった。というのも、彼はテクノロジーの天才だがいわゆるおたくの世界に属していて、きれいな女の子はみんな花形のスポーツ選手と一緒にいたがることに怒りを覚えていた。彼がすごい能力を持っていても振り向きもしない女性たちを憎んでいたんだ。だから自分が権力を手にした時にその成功を誇示できるトロフィーか、敵としてしか女性をみていない。そういうマークの世界を明確に描きたかった。

 実際に、彼の周囲には挑戦をしかけてくるような女性はいなかった。例外的な存在はマークを振ったエリカ、グレッチェンという弁護士、そしてもう1人の若い弁護士マリリンの3人。マリリンは創作した人物だが自信にあふれる、非常に真面目な女性だ。でも悲しいことに、あとはグルーピーみたいな女性ばかりというのが現実だった。

──マークに初めて会ったら、どんな言葉をかけたい?

 誰も19歳のときに自分がやったことについての映画なんか作ってほしくないよね。でもその居心地の悪さに対し、品位ある態度を保ったことに尊敬を感じる。ビールをおごらせて(笑)。

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