『トロン・レガシー』知られざる舞台裏
82年公開のCG映画『トロン』の続編を手がけたジョセフ・コジンスキー監督に製作の舞台裏や作品の見どころを聞いた
未知の世界へ コンピュータの中にある別世界に入り込んだサム(左)は謎の女性クオラ(右)に出会うが ©Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.
82年のSF映画『トロン』といえば、CGを駆使した画期的な映像で当時大きな話題を呼んだ。その続編『トロン:レガシー』が、12月17日から世界同時公開される。
主人公の若者サム(ギャレット・ヘドランド)はある日、20年前に失踪した父ケビン(ジェフ・ブリッジス)から謎のメッセージを受け取る。かすかな希望を胸に、当時デジタル界のカリスマ的存在だった父のオフィスを調べていると突然強い光に包まれる。気づくとそこは、コンピュータ・システムの中の世界だった──。
本作で映画監督デビューを果たしたジョセフ・コジンスキーは、ナイキやアップルの未来的テイストのコマーシャルなどで注目される映像作家。本誌・佐伯直美が話を聞いた。
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──製作が決まる前の08年に、短いサンプル映像をアメリカのポップカルチャーの祭典「コミック・コン・インターナショナル」で披露したら大反響だったとか。
あれが映画化を決定づけた。発表前は不安で仕方なかった。反応が悪ければプロジェクトはおしまいだからね。反応の大きさを本当に感じたのは発表の数日後。隠し撮りされた映像がネット上に流れ、あっという間にファンの間で話題になった。あの時ニーズがあると実感した。
──82年に発表された前作のコアなファンが多いのはプレッシャーだったか。
前作はいろいろな意味で既成概念を打ち破った作品だった。コンピュータの中に別世界があるというコンセプトもそうだし、映像面でも数々の革新的な試みをした。だから今回も、今の時代の限界に挑む作品にしなければというプレッシャーはあった。
──ジェフ・ブリッジスは1人2役で、自分の若い頃にそっくりな「分身」クルーを演じているが、自然な映像で驚いた。
あれはまず顔にたくさんのマーカーをつけた状態でジェフにクルーを演じてもらい、彼の表情や動きを録画する。このデータをもとに「デジタルな頭部」を作る。次にクルーの体だけを代役が演じる。クルーは若いし体がしまってるから。そしてこの体に先の頭部を合体させる。
この技術を活用した最初の成功例は映画『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』だった。あの作品ではCGでブラッド・ピットを老いさせていったが、今回は逆。同じスタッフが特殊効果を手がけている。
──自分の顔でも試してみたか。
遊び感覚で試せるようなものじゃないんだよ。ジェフの頭を作るだけで約1年かかった。