今度のキャリーの本命は
『SATC2』が安価なブランドとコラボレーション? ファッションの意外な展開にも要注目
新たな冒険 前作から2年、ヒロインたちはアブダビへ旅立つ(6月4日公開) ©2010 New Line Productions, Inc. and Home Box Office, Inc.
5番街を闊歩するときは白いジャージードレス(325ドル)にゴールドのピンヒール。マンション周辺の散策ならロイヤルブルーのティアード・プリーツドレス(435ドル)。バカンスに訪れたアブダビではピンクのつるんとしたワンショルダー(325ドル)をまとい、砂漠を歩くときは鮮やかなオレンジ色のシルクのプリーツドレス(895ドル)を着こなす。
キャリー・ブラッドショーならそうこなくちゃ! TPO的にはNGだけど、なんといってもゴージャスだから。
5月27日全米公開の『セックス・アンド・ザ・シティ(SATC)2』は世界で4億ドルを稼いだ前作と同じく、ファッションが大きな話題になるだろう。しかも今回、キャリーは浮気なし。本命はビッグやエイダン......ではなくて、「ホルストン・ヘリテージ」。予告編を見る限り、キャリーの服はどれもサラ・ジェシカ・パーカー率いる同ブランドのものだ。
キャリーの服が手頃価格で
パーカーと老舗ファッションブランドのホルストンが契約を結んだのは今年1月のこと。パーカーは、ホルストンが手頃な価格で提供するセカンドライン、ホルストン・ヘリテージの社長兼CCO(最高クリエーティブ責任者)に就任した。
ちょっと背伸びした高校生向けといったミニドレスがそろい、販路は高級デパート「ノードストローム」やブランド通販サイト「ショップボップ」のような人気店。ホルストンの通常ラインは2000〜4000ドルだが、ヘリテージなら冒頭のように10分の1程度で手に入る。
これが『SATC』シリーズの新しいスタイルだ。4人のヒロインは年を重ねるが、マーケティング対象は若返る。10代のアイドル、マイリー・サイラスもこのシリーズが大好きと言い、『SATC2』にカメオ出演している。
しかし、安価なブランドとのコラボは意外な転換だ。『SATC』の熱いファンは、ディオールやオスカー・デ・ラ・レンタ、アレキサンダー・マックイーンに憧れる女性たち。キャリーも華やかなワンピースに飛び切り高価なハイヒール、じゃらじゃらしたアクセサリーを見せびらかしていた。
それが今回は80年代のディスコに現れたバービー人形のようだ。しかもそのドレスは「主要百貨店」で発売中。初めて誰もが、キャリーの衣装をそっくりそのままワードローブに持てるようになった。
この転換は賢い戦略でもある。とりわけ20年以上も低迷していたホルストンにとっては、『SATC』と手を組めば成功が約束されたも同然なのだから。
前作に登場したマノロ・ブラニクのパンプス「サムシング・ブルー」は現在も引っ張りだこだし、キャリーが着たヴィヴィアン・ウェストウッドのウエディングドレスは、1万ドルもするのに数時間で完売になった。
絶大な影響力をどう生かす
『SATC』シリーズはもともと、巧みなマーケティングで知られているが、ホルストン・ヘリテージは最良のパートナーかもしれない。前作で提携したお酒や車より、ファッションの広がりのほうが観客は親近感を覚えるし、興味をかき立てられる。
しかし、『SATC2』が80年代風パーティードレスを売り込む以上のことを狙っているのなら、慎重にやるべきだと、ニューヨーク州立ファッション工科大学美術館の副館長でファッション史家のパトリシア・ミアーズは言う。