最新記事

映画

『ラブリーボーン』とオスカーと家族と

主人公スージーを瑞々しい魅力全開で演じたシアーシャ・ローナンに聞く

2010年2月10日(水)12時25分
大橋希

ローナン演じるスージーは父ジャック(マーク・ウォルバーグ)と大の仲良し ©2009 by Paramount Pictures. All Rights Reserved.

 07年の『つぐない』でキーラ・ナイトレイの妹を演じ、アカデミー賞助演女優賞候補となった少女を覚えているだろうか? 

 ちょっぴり大人になったシアーシャ・ローナン(15)はピーター・ジャクソン監督の『ラブリーボーン』(日本公開中)で、殺害され天国に向かう少女スージーを、「この時期だからこそ」の魅力全開で演じている。透き通るような肌に長い手足、軽快な受け答えが印象的なローナンに話を聞いた。

――ジャクソンはこれまで仕事をした監督とは違ったとか?

 そう、すごく情報をくれるの。しっかりとした構想があって、各シーンで何が必要か全部説明してくれる。でも、演技についてはまかせてくれるから安心して臨める。現場の雰囲気作りもすごくうまい。

 あと、ピーターとの仕事の場合、場所が特殊ってこともあるかな。ニュージーランドにある彼のスタジオでほとんど撮影したから。とにかく、彼と仕事した9カ月は本当に素晴らしかった。

――彼は裸足だった?

 たいていね。ホビットみたいに(笑)。それで、いつも紅茶を持ってる。

――悲しい役柄に入り込みすぎて、気分が落ち込んだりはしなかった?

 ノー、全然よ。こういうことが若い女の子に起きたら......と辛い気持ちにはなったけど。

 それに演じていると、スージーが実在の人間で親友みたいに思えてくる。その彼女がこんな経験をしたって考えたら胸が痛くなった。でも落ち込むまではいかない。結局は仕事だからね。

――監督は無名の女優をスージー役に充てたかったとか。でもあなたはこの映画の撮影中にアカデミー賞候補になってしまった。

 もちろん『つぐない』から私を知っている人はいるだろうけど、自分ではほとんど無名だと思う。

 ニュージーランドで報せを聞いたんだけど、ピーターたちも喜んでくれた。彼らは何度も......そう、20回とか? ノミネートされているから、「すごく非現実的な経験で、こんなことが起こるよ」とか「普通の賞や授賞式とは雰囲気が違う」とかいろいろ教えてくれた。

――天国の描写が「軽過ぎる」という批判もあったようだが。

 私は大好き。予想もしなかったような色使いや編集方法が素晴らしい。夢や想像力やポップカルチャーといった14歳の少女の世界が入っていて、うまいなと思った。

 頭の中で想像したことをビジュアル化するのは大変なことだし、それをみんなに見られるんだからちょっとリスクはあるでしょうけどね。

――スージーみたいに父親と仲がいい?

 父とも母とも、それぞれ違った結びつきがある。私は一人っ子で両親と一緒に過ごす時間が長いから、とても仲がいいの。幸せなことだと思う。

――今はアイルランドに住んでいる。親元を離れる予定は......。

 全然ない。まだ15歳だもの! 大学には行きたいと思うから、そのころに自立するのが健全でしょうね。

――アメリカの大学に行って、ハリウッドで仕事を続けるのはどう?

 今はとても忙しくてどうなるか考えもつかないけど、できれば学業と仕事を両立させたい。それが理想。

――次は『ハンナ』で殺人者を演じるけど、どんな気分?

 すごく変な感じがする(笑)。殺人の被害者から、今度は殺人者だもの。でもわくわくするような脚本で、読んだ人はみんな「最高にクール!」って言ってる。ジョー(・ライト監督)とまた仕事ができるし、『つぐない』とはまったく違う現代物のアクション映画だから、すごく楽しみ。

[2010年2月10日号掲載]

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ発表 初の実戦使用

ワールド

国際刑事裁判所、イスラエル首相らに逮捕状 戦争犯罪

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部の民家空爆 犠牲者多数

ビジネス

米国は以前よりインフレに脆弱=リッチモンド連銀総裁
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 2
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 5
    「ワークライフバランス不要論」で炎上...若手起業家…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 8
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 9
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 10
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国」...写真を発見した孫が「衝撃を受けた」理由とは?
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶり…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中