『THIS IS IT』振付師が語る秘話
――ツアーでは新しいアイデアを追求する一方で、代表的な曲や踊りの変わらない魅力も大切にしていた。そこのバランスはどう考えていたんだろう。
代表的な曲や踊りは守っていくという姿勢をもっていた。でもマイケル・ジャクソンのショーには、常に驚きや新しいアイデアがなくてはならない。代表作の品格を保ちながら、聴衆に新鮮な驚きを与えるにはどうすべきかが重要なテーマだった。
実現する道は必ずある。マイケルはいつも「行き詰ったら、そこから少し離れて音楽に耳を傾けることだ。音楽がどうすべきか、何が必要か教えてくれる」と言っていた。
ステージ上では、彼はとてもリラックスしていた。むしろステージ以外の時間のほうがつらそうだった。その気持ちは分かる。ステージでアドレナリン全開のパフォーマンスをしてから、急にジェットエンジンを消すようなものだから、とても難しいことだよ。それは私個人の経験だから、マイケルの場合はどうだったかなんて想像もつかない。
――なぜ長い間ツアーをやらなかったのだろうか。
企画はたくさんあったけど、引かれるものがなかったらしい。彼はとてもスピリチュアルな視点で物事を決める人だったから、すべてがしっくりくるタイミングをただ待っていたんだと思う。
――彼はよく「新しいアイデアを思いついた」と電話してきたとか。
しょっちゅうね。ちょうど寝ようとしていると電話が鳴る。夜は子供も寝ていて電話も鳴らないから、彼にとってはクリエーティブな作業に費やせる時間だった。
僕がよく「マイケル今夜はちゃんと休んでくれよ、新しいアイデアを思い付いたりしちゃダメだよ」と言うと、彼は「分かってる、分かってるよ」って答えた。
――でもその後に電話が鳴る?
間違いなくね(笑)。いつもそうだった。