日本で個人投資家が増えないのは「単元株制度」のせい
PonyWang-iStock.
<日本の個人金融資産が2000兆円を超えたものの、そのほとんどは現金・預金。なぜ、いつまでも株式投資が浸透しないのか>
個人金融資産2000兆円時代
日本銀行が2022年3月に発表した2021年10〜12月期の「資金循環統計(速報)」によると、2021年12月末時点の家計金融資産(個人金融資産)は2015兆円となり、初めて2000兆円の大台を突破しました。そして、6月に発表された2022年3月末でも2005兆円となっています。
金融資産が初めて1000兆円に達したのは1990年。そこから30年あまりで倍増したことになります。賃金がほぼ横ばいのなか、将来への不安から消費を抑え、貯蓄に回す傾向が強くなったことが原因です。また、高齢化の進展によって、50代以上の預金を持つ人が増えているのです。
ただ、家計資産の半分以上を占めているのは「現金・預金」です。3月末時点の残高で、現金・預金は1088兆円。全体の54%を占めています。しかもこれは、過去30年間の上限値(48~55%)に近くなっています。
それに対して、「投資信託」「株式等」をあわせても約15%で横ばい。国民資産全体から見ると、貯蓄から投資への流れはほとんど進んでいないことがわかります。
アメリカの個人金融資産は114兆ドル(約1京2900兆円)で、その半分以上を株式と投資信託が占め、株価上昇が国民の資産と消費を押し上げています。日本の個人金融資産は約30年で2倍になりましたが、アメリカは6.7倍に膨らみました。
■個人株主の比率が半減
日本では個人株主の比率が低下しています。東京証券取引所などが7月に発表した「2021年度株主分布状況調査」によると、個人が保有する株式の割合は金額ベースで16.6%と、この50年間で半減しました。
戦後、財閥や政府が保有する株式を個人が保有することを推奨する「証券民主化運動」が起こり、1970年代には個人株主の持ち株比率が40%近くに達しました。
しかしその後、企業は外資から経営権を守るため、銀行などとの株式持ち合いを加速。バブル崩壊とともに日本企業の成長期待も崩れ、2011年度以降、個人株主比率は徐々に低下し、最近は20%を割り込んでいるのです。
■若年層中心に投資への関心が高まる
ただ、若年層を中心に投資への関心は高まっています。楽天証券は2022年に証券総合口座数が800万口座を突破しましたが、新規口座の開設では、30代以下が6割強を占めています。
「給与が上がらない」など将来への不安が高まり、積立でコツコツ投資する需要が伸びているのです。
そうは言っても、株式投資に対するハードルはまだ高いようです。日本証券業協会の「証券投資に関する全国調査(2021年度)」によると、株式を購入しない理由として「株式投資するほどの資金がなかった」が24.6%で2番目になっています。