最新記事

株の基礎知識

日本で個人投資家が増えないのは「単元株制度」のせい

2022年9月29日(木)19時15分
山下耕太郎 ※かぶまどより転載

投資への壁は「単元株制度」にあり

日本で個人投資家が増えない理由のひとつは、「単元株制度」にあると考えられます。単元株制度とは、株式を売買する際の最低取引株式数(1単元)を企業が自由に決められる制度で、2001年10月に施行された改正商法で導入されました。

単元株制度では、企業は定款で一定の株数を1単元とすることを定めることができます。ただし、1単元の株式数が1,000株を超えることはできません。さらに2018年10月1日より、全国の取引所において株式の売買単位が100株に統一されたため、現在では、すべての株式が100株単位で取引されています。

一方、アメリカでは1株単位で株式を購入できます。

たとえば、ユニクロを展開するファーストリテイリング<9983>の株価は85,550円(8月19日終値)なので、株式を手に入れるには850万円を超える資金が必要になります(手数料等を考慮せず)。でも、米アップル<AAPL>は174.15ドル(8月18日終値)なので、2万円ちょっとで購入できます。

kabumado20220929tangenkabu-chart5.png

アメリカ株の多くが数万~数十万円で購入できるのに対し、日本の有名企業では数百万円の資金が必要になることも珍しくありません。

非課税制度であるNISAは、個人の資産を貯蓄から投資へ回してもらうための施策のひとつですが、そもそも年間の非課税枠が120万円しかなく、それでは購入できない銘柄も多いのです。日本が手本にしたイギリスのISAの320万円とも開きがあります。

「貯蓄から投資」への流れをつくるためには、株式を購入しやすいようにNISA制度を見直すことと、アメリカのように1株で購入できるようにする必要があるでしょう。

株式投資をすべての人へ

ネット証券各社では、少額投資のニーズに応えるため、1株から購入できる「単元未満株」サービスを行っています。しかし、単元未満株は取引が終値のみか1日3回に限定され、リアルタイムでの売買はできません。

また、単元未満株では完全な株主の権利も認められません。配当金は受け取れますが、株主優待は受けとれませんし、株主総会での議決権もないのです。

日本では依然として「株式投資はお金持ちがするもの」というイメージが強いのですが、それは「単元株制度」が原因のひとつだと言えます。実際、ユニクロ株がほしければ800万もの資金が必要だと聞けば、ほとんどの人が諦めてしまうでしょう。

個人金融資産が2000兆円を超えた今こそ、個人投資家の裾野を広げるために、より効果的な策が講じられることに期待します。

(参考記事)日銀の為替介入で相場はどうなるか? 歴史が教えてくれることは...


[執筆者]
山下耕太郎(やました・こうたろう)
一橋大学経済学部卒業。証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て、個人投資家に転身。投資歴20年以上。現在は、日経225先物・オプションを中心に、現物株・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。趣味は、ウィンドサーフィン。ツイッター@yanta2011 先物オプション奮闘日誌

※当記事は「かぶまど」の提供記事です
kabumado_newlogo200-2021.jpg


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

焦点:大混乱に陥る米国の漁業、トランプ政権が割当量

ワールド

トランプ氏、相互関税巡り交渉用意 医薬品への関税も

ワールド

米加首脳が電話会談、トランプ氏「生産的」 カーニー

ワールド

鉱物協定巡る米の要求に変化、判断は時期尚早=ゼレン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジェールからも追放される中国人
  • 3
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中国・河南省で見つかった「異常な」埋葬文化
  • 4
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 5
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 6
    なぜANAは、手荷物カウンターの待ち時間を最大50分か…
  • 7
    不屈のウクライナ、失ったクルスクの代わりにベルゴ…
  • 8
    アルコール依存症を克服して「人生がカラフルなこと…
  • 9
    最悪失明...目の健康を脅かす「2型糖尿病」が若い世…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えない「よい炭水化物」とは?
  • 4
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 5
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 7
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 8
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 9
    大谷登場でざわつく報道陣...山本由伸の会見で大谷翔…
  • 10
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中