日本で個人投資家が増えないのは「単元株制度」のせい
投資への壁は「単元株制度」にあり
日本で個人投資家が増えない理由のひとつは、「単元株制度」にあると考えられます。単元株制度とは、株式を売買する際の最低取引株式数(1単元)を企業が自由に決められる制度で、2001年10月に施行された改正商法で導入されました。
単元株制度では、企業は定款で一定の株数を1単元とすることを定めることができます。ただし、1単元の株式数が1,000株を超えることはできません。さらに2018年10月1日より、全国の取引所において株式の売買単位が100株に統一されたため、現在では、すべての株式が100株単位で取引されています。
一方、アメリカでは1株単位で株式を購入できます。
たとえば、ユニクロを展開するファーストリテイリング<9983>の株価は85,550円(8月19日終値)なので、株式を手に入れるには850万円を超える資金が必要になります(手数料等を考慮せず)。でも、米アップル<AAPL>は174.15ドル(8月18日終値)なので、2万円ちょっとで購入できます。
アメリカ株の多くが数万~数十万円で購入できるのに対し、日本の有名企業では数百万円の資金が必要になることも珍しくありません。
非課税制度であるNISAは、個人の資産を貯蓄から投資へ回してもらうための施策のひとつですが、そもそも年間の非課税枠が120万円しかなく、それでは購入できない銘柄も多いのです。日本が手本にしたイギリスのISAの320万円とも開きがあります。
「貯蓄から投資」への流れをつくるためには、株式を購入しやすいようにNISA制度を見直すことと、アメリカのように1株で購入できるようにする必要があるでしょう。
株式投資をすべての人へ
ネット証券各社では、少額投資のニーズに応えるため、1株から購入できる「単元未満株」サービスを行っています。しかし、単元未満株は取引が終値のみか1日3回に限定され、リアルタイムでの売買はできません。
また、単元未満株では完全な株主の権利も認められません。配当金は受け取れますが、株主優待は受けとれませんし、株主総会での議決権もないのです。
日本では依然として「株式投資はお金持ちがするもの」というイメージが強いのですが、それは「単元株制度」が原因のひとつだと言えます。実際、ユニクロ株がほしければ800万もの資金が必要だと聞けば、ほとんどの人が諦めてしまうでしょう。
個人金融資産が2000兆円を超えた今こそ、個人投資家の裾野を広げるために、より効果的な策が講じられることに期待します。
(参考記事)日銀の為替介入で相場はどうなるか? 歴史が教えてくれることは...
[執筆者]
山下耕太郎(やました・こうたろう)
一橋大学経済学部卒業。証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て、個人投資家に転身。投資歴20年以上。現在は、日経225先物・オプションを中心に、現物株・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。趣味は、ウィンドサーフィン。ツイッター@yanta2011 先物オプション奮闘日誌