最新記事

株の基礎知識

東証再編、あえてスタンダード市場を選ぶあの企業の「事情」

2022年2月28日(月)12時00分
佐々木達也 ※かぶまどより転載

今回の再編に関しては、プライム市場のコンセプトである「グローバルな投資家との建設的な対話を中心に据えた企業向けの市場」をより明確にするため、流通株時価総額などの上場要件をもっと厳格にするべきではないかといった意見もありました。

結果として、東証1部の8割以上にあたる1,800社あまりがそのままプライム市場に残るのでは、本格的な再編にならないのではないか、との厳しい意見もあります。

■大きく変わるのはTOPIX

プライム市場に上場するか、それともスタンダード市場に上場するか──。将来的に大きな違いが出てくるのは、TOPIX(東証株価指数)の投資対象か否かという観点です。TOPIXとは、東証1部に上場する全銘柄を対象として算出される株式指数です。

ただし、4月の市場再編と同時にTOPIXの算出対象が「東証1部」から「プライム市場」に変わるわけではありません。現在TOPIXに採用されている企業は、これまでの実績や指数としての継続性などを考慮して、市場再編後もひとまずTOPIXに組み入れられます。

ただし、流通株式の時価総額が100億円未満の企業については、2025年1月までに段階的にウエイトの見直しが行われます。要するに、少しずつ構成比率が下がっていき、最終的にはTOPIXから除外されます。

■プライム上場を目指して

ここでポイントになるのが「上場維持基準に向けた計画書」です。この計画書は、新市場の上場基準を満たしていなくとも、緩和された基準を満たしていれば当面は上場が認められる、という救済措置を受けるための免罪符のようなものです。

現時点では、東証1部に上場している企業のうちおよそ600社はプライム市場の基準を満たしていませんが、そのうちの300社は、この計画書を提出してプライム市場に上場する見込みです。

計画書を提出することで、投資家に対して、どのような道筋で流通時価総額や株主数、業績を改善するのかを明確に示すことができるというメリットもあります。プライム上場に意欲的な企業は、すでに大株主による株式の売出や自己株式の処分、持ち合い株式の解消、増配、成長戦略の提示などのアクションを行っています。

ただし、この計画書には現時点で期限が設定されていないことから、実効性について疑問の声もあります。実際に改善が進んでいない企業に対しては、むしろ市場はネガティブに反応しそうです。

自分の投資先企業が東証再編に際してどの市場に上場する予定になっているか、プライムの上場基準を満たしているかなどについては、事前にしっかりと確認しておきたいところです(企業ホームページの「投資家情報」「IR情報」などからニュースリリースを探します)。

(参考記事)株式市場でも話題の「メタバース」 期待される理由と注目の関連銘柄は?

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

大和証Gの10-12月期、純利益は63.9%増の4

ワールド

原油先物上昇、トランプ関税を注視 週間では下落へ

ビジネス

蘭ASML、四半期決算での新規受注公表中止 株価乱

ワールド

トランプ氏「BRICS通貨つくるな」、対応次第で1
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 4
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 5
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 6
    ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「…
  • 7
    「やっぱりかわいい」10年ぶり復帰のキャメロン・デ…
  • 8
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 9
    空港で「もう一人の自分」が目の前を歩いている? …
  • 10
    フジテレビ局員の「公益通報」だったのか...スポーツ…
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 7
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 8
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 9
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 10
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 5
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 10
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中