初心者が知らない「株価が上がる」たったひとつの理由
■買いたい・売りたい、思惑は人ぞれぞれ
ここでは「儲かっている(と多くの人が考える)会社」を例に挙げましたが、株の世界で人気度が上がる理由はそれだけではありません。
AI関連やバイオ関連といった旬なテーマの企業には多くの注目が集まるため、買いたい人が増えます。つまり、株価が上がっていくと考えられます。すると、さらに買いたい人が増えて、株価はますます上がっていきます。赤字のベンチャー企業の株価が上がるのは、こういう理由からです。
他にも、ずっと業績が悪く株価も下がりっぱなしだった企業に対して、「もうこれ以上、悪くなることはないだろう」と考えて買いに回る人が増え、再び人気と株価を取り戻すこともよくあります。テレビの生放送でコケた子が人気になるなど、何がきっかけで売れるかわからないアイドルと同じです。
さらに株の場合は、過去の株価の動きを分析した結果、「この先は上がる」というシグナルが出たから買う、という人もいます。儲かっているか、人気度が上がっているか、といったこととは関係なく、単純に株価の動きのみを見て、そう判断しているのです。
すべての人の思惑を知ることはできません。でも、なんにせよ、その株を買いたい人が売りたい人より多ければ株価は上がり、買いたい人が減って売りたい人が増えれば株価は下がる。株価が上がる理由は、かくもシンプルなのです。
利益確定を忘れずに
ピンと来た株をすかさずゲット。その後、思惑どおりに株価が大きく上がったとしても、実は、まだ儲かったことにはなりません。いま持っているのは、あくまで株式。それを売却してお金に換えるまでは、購入費用を支払った分だけ財布の中身はマイナスなのです(配当金などは除く)。
「株を買ったら、いつの間にかものすごく儲かっている」と自慢する人がいますが、株は売却してはじめて利益になります。売却せず保有したままでは、気づいたときには大損になっている可能性もあります。人気化する理由も様々なように、人気が薄れる理由も様々だからです。
人がその企業をどう思っているか。その思惑で、株価は上がったり下がったりします。言い換えると、株価チャートや財務諸表を読めなくても、「人の思惑」を読むことができれば、株はそんなに難しいものではありません。
2020/06/22
[執筆者]
岡田禎子(おかだ・さちこ)
証券会社、資産運用会社を経て、ファイナンシャル・プランナーとして独立。資産運用の観点から「投資は面白い」をモットーに、投資の素晴らしさ、楽しさを一人でも多くの方に伝えていけるよう活動中。個人投資家としては20年以上の経験があり、特に個別株投資については特別な思い入れがある。さまざまなメディアに執筆するほか、セミナー講師も務める。テレビ東京系列ドラマ「インベスターZ」の脚本協力も務める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、ファイナンシャル・プランナー(CFP)【株窓アワード2019大賞】