最新記事

株の基礎知識

日本株を影で大量保有 日銀のETF買入れが株価に与える影響とは?

2020年11月10日(火)11時15分
宇佐見聖果 ※株の窓口より転載

さらに、各企業にとってみれば「物言わぬ株主」の割合が増えているわけで、外部からの指摘が衰えることで活性化や健全性が損なわれてしまうこともあるかもしれません。

また、仮に日銀が今後もペースを崩さずに購入を進めるとした場合、現在5%を占める株式保有率はさらに膨大していきます。極端に言えば、このままいけば将来、日銀が株式市場を司ってしまう事態になりかねず、現状のやり方をいつまでも続けていけないことは明らかといえるでしょう。

■日銀の介入がなくなったとき、相場はどうなる?

したがって、日銀もどこかではETF購入のセーブに踏み切らざるをえないわけですが、そのときに市場はどのような反応を示すでしょうか。まず、下支えがなくなる市場に不安を感じ、マイナス心理が働くことが考えられます。

また、日銀のバランスシートは株式の占める割合が年々増しているわけですが、仮に今後株価が大きく下がり、保有株式がバランスシートの簿価を下回ってしまった場合、最悪の場合には債務超過となって円の安定性問題にまで波及する可能性もゼロではありません。

そうなれば当然、株価にも影響をもたらすでしょう。

日銀の動向はどこへ向かうのか?

ところで、現時点において日本株保有者のおよそ70%を占める海外投資家は、こうした日銀によるETF購入をどうみているのでしょうか。

海外投資家からの売買代金推移は安定しており、現時点において、日銀の動向に関して警戒を示しているといったことはないように見受けられます。ひょっとすると、プラスに捉えられているのかもしれません。

その一方、直近のOECDによる「対日経済審査報告書」では、日銀のETF買入れについて「市場の規律を損ないつつある」と指摘されるなど、懸念される声が上がっていることも事実です。

中央銀行による株式市場への介入は世界でも前例がないことですので、それだけに海外からの注目度も高く、また、国内でも見通しが掴めきれない分野でもあります。いずれにしろ、ダイレクトに株式市場に影響を与える要素であり、今後も関連ニュースからは目が離せません。

2020/11/06

[執筆者]
宇佐見聖果(うさみ・せいら)
個人投資家向けリサーチ会社の客員アナリストとして、上場企業へ訪問取材及び執筆を行う。興味の幅が広くて影響を受けやすい性格から複数の世界に首を突っ込んでいたが、子供が生まれてからようやくスイッチが入る。「わが子に対して堂々と背中を見せられる仕事をしなければ」という意識の芽生えのもと、働き方や生き方の道筋作りを模索する中で、常々興味を抱いていた企業研究や株式投資の世界にのめり込む。ライターとしても日々精進中。

※当記事は「株の窓口」の提供記事です
kabumado_logo200new.jpg

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

英軍個人情報に不正アクセス、スナク氏「悪意ある人物

ワールド

プーチン大統領、通算5期目始動 西側との核協議に前

ワールド

ロシア裁判所、JPモルガンとコメルツ銀の資産差し押

ビジネス

UBS、クレディS買収以来初の四半期黒字 自社株買
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 3

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 4

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表.…

  • 5

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 6

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 7

    「ハイヒールが効率的な歩行に役立つ」という最新研究

  • 8

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 9

    メーガン妃を熱心に売り込むヘンリー王子の「マネー…

  • 10

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 5

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 6

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 7

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 8

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 9

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 10

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中