「コロナ禍でアメリカ市場が弱気相場入り」が意味するもの
新型コロナウイルス対策として取引フロアが閉鎖されることになったニューヨーク証券取引所(閉鎖前の3月20日) Lucas Jackson-REUTERS
<新型コロナウイルスの感染拡大で世界的に株式相場の急落が続く。「弱気相場に転じた」と報じられたが、これをどう捉えたらよいのか>
コロナショックで弱気相場入り?
新型コロナウイルスの感染拡大による景気悪化懸念、原油相場の急落による産油国の財政悪化などを背景に、世界的に株式相場の急落が続いています。アメリカ株や日本株の大幅な下落を受けて、「弱気相場に転じた」と各メディアで報じられました。
リーマンショックや今回の新型コロナウイルスの影響による下落相場のように、市場全体が先行きの不安感に襲われている地合いにおいては、優良大型株も新興小型株も関係なく、売りが売りを呼ぶ展開になります。これが「弱気相場」と言われる状態です。
反対に、いわゆるバブルのような「強気相場」になると、ほとんどの市場参加者が先行き値上がりへの期待感から、とにかく値上がりする前に少しでも早く買い注文を入れようという状況になります。
■市場参加者の心理が株価を作る
株の世界では「市場心理」という単語がよく使われますが、市場は人間同士が作っている以上、市場参加者の心理が強気なのか弱気なのか、という雰囲気は株価に大きな影響を与えます。例えば弱気相場では、企業業績や配当利回り、PER・PBRなどによる理論価格を大きく超えて下落することも多々あります。
株式市場はしばしば生き物に喩えられますが、まさに生き物が暴れているかのように、現在の相場は乱高下を繰り返しています。
そもそも弱気相場とは
弱気相場入りの定義はまちまちですが、一般的には、大型株の指数が直近1年の高値から10%以上下落すると「調整局面入り」したとみなし、20%以上の下落となると「弱気相場に入った」とみなされます。
3月12日のダウ工業株30種平均は1,464ドル下落の23,553ドルで取引を終えました。2月12日に付けた史上最高値である29,551ドルから20%超の下落となったため、これをもって「弱気相場入り」となったのです。リーマンショックのあった2008年〜2009年以降では、実に11年ぶりのことです。
■弱気相場からの景気後退は8割
過去の経験則によると、弱気相場入りした後は実体経済が景気後退入りする確率が高くなります。米ブルームバーグによると、過去93年間でアメリカ株相場が弱気相場入りしたのは13回で、その後1年以内に景気後退しなかったのは2回だけ、8割のケースでは景気後退している、とのことです。
アメリカ経済は、近年では米中貿易摩擦などにより製造業などの景況感が悪化していました。一方で、サービス業や小売などの非製造業は堅調で、株高による資産効果や減税などの効果もあり、小売売上高や住宅投資などの経済指標も緩やかな伸びを見せていました。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により人や物の移動が著しく制限され、これまで堅調だった小売・旅行・ホテルなどのサービス業などで急速に景気悪化が広がっており、少なくとも短期的な景気後退は避けられない模様です。