最新記事

株の基礎知識

「コロナ禍でアメリカ市場が弱気相場入り」が意味するもの

2020年4月3日(金)19時55分
佐々木達也 ※株の窓口より転載

新型コロナウイルス対策として取引フロアが閉鎖されることになったニューヨーク証券取引所(閉鎖前の3月20日) Lucas Jackson-REUTERS

<新型コロナウイルスの感染拡大で世界的に株式相場の急落が続く。「弱気相場に転じた」と報じられたが、これをどう捉えたらよいのか>

コロナショックで弱気相場入り?

新型コロナウイルスの感染拡大による景気悪化懸念、原油相場の急落による産油国の財政悪化などを背景に、世界的に株式相場の急落が続いています。アメリカ株や日本株の大幅な下落を受けて、「弱気相場に転じた」と各メディアで報じられました。

リーマンショックや今回の新型コロナウイルスの影響による下落相場のように、市場全体が先行きの不安感に襲われている地合いにおいては、優良大型株も新興小型株も関係なく、売りが売りを呼ぶ展開になります。これが「弱気相場」と言われる状態です。

反対に、いわゆるバブルのような「強気相場」になると、ほとんどの市場参加者が先行き値上がりへの期待感から、とにかく値上がりする前に少しでも早く買い注文を入れようという状況になります。

■市場参加者の心理が株価を作る

株の世界では「市場心理」という単語がよく使われますが、市場は人間同士が作っている以上、市場参加者の心理が強気なのか弱気なのか、という雰囲気は株価に大きな影響を与えます。例えば弱気相場では、企業業績や配当利回り、PER・PBRなどによる理論価格を大きく超えて下落することも多々あります。

株式市場はしばしば生き物に喩えられますが、まさに生き物が暴れているかのように、現在の相場は乱高下を繰り返しています。

そもそも弱気相場とは

弱気相場入りの定義はまちまちですが、一般的には、大型株の指数が直近1年の高値から10%以上下落すると「調整局面入り」したとみなし、20%以上の下落となると「弱気相場に入った」とみなされます。

3月12日のダウ工業株30種平均は1,464ドル下落の23,553ドルで取引を終えました。2月12日に付けた史上最高値である29,551ドルから20%超の下落となったため、これをもって「弱気相場入り」となったのです。リーマンショックのあった2008年〜2009年以降では、実に11年ぶりのことです。

kabumado20200403covid19-chart1-B.png

■弱気相場からの景気後退は8割

過去の経験則によると、弱気相場入りした後は実体経済が景気後退入りする確率が高くなります。米ブルームバーグによると、過去93年間でアメリカ株相場が弱気相場入りしたのは13回で、その後1年以内に景気後退しなかったのは2回だけ、8割のケースでは景気後退している、とのことです。

アメリカ経済は、近年では米中貿易摩擦などにより製造業などの景況感が悪化していました。一方で、サービス業や小売などの非製造業は堅調で、株高による資産効果や減税などの効果もあり、小売売上高や住宅投資などの経済指標も緩やかな伸びを見せていました。

しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により人や物の移動が著しく制限され、これまで堅調だった小売・旅行・ホテルなどのサービス業などで急速に景気悪化が広がっており、少なくとも短期的な景気後退は避けられない模様です。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

中国軍機14機が中間線越え、中国軍は「実践上陸訓練

ビジネス

EXCLUSIVE-スイスUBS、資産運用業務見直

ワールド

ロシア産肥料を米企業が積極購入、戦費調達に貢献と米

ビジネス

ECB、利下げごとにデータ蓄積必要 不確実性踏まえ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中