「コロナ禍でアメリカ市場が弱気相場入り」が意味するもの
それでは強気相場とは
一方で強気相場とは、こちらも明確な定義はありませんが、概ね弱気相場入りすることなく長期の上昇相場が続くことを指しています。
ダウ平均株価やS&P500などのアメリカの主要株価指数は、リーマンショック後の2009年3月から2020年2月まで、約11年間、弱気相場入りすることなく右肩上がりの強気相場を続けていました。この間にダウ平均株価は、6,547ドルから29,551ドルへと約4.5倍になっています。
史上最長の強気相場が続いた理由は解釈が分かれますが、リーマンショック後に米FRBや欧州ECB、日銀など先進国の中央銀行が景気対策のために行ってきた量的緩和政策により供給されたマネーが、景気や金融市場の下支えを続けてきたことが大きいだろうと筆者は考えています。
また、過去の景気回復局面に比べてインフレ上昇率が低かったことも、強気相場が継続した理由のひとつとして挙げられるでしょう。
■史上最長の強気相場の背景にあるもの
経済のセオリーのひとつとして、景気の落ち込みを支えるための金融政策によって景気が回復すると、需要が増加して物価が上がるため、インフレ率が上昇します。インフレ率が過度に上昇すると、賃金が同じ場合は消費者の購買力が実質的に低下します。また、コスト増加により企業の利益を圧迫します。
このようなインフレによる悪循環を回避するために、中央銀行は景気の過熱を抑えるべく金利を引き上げたり、量的緩和を停止して市中のマネーを回収するなど、インフレを抑えるように金融政策を変更します。過去においては、こうした金融引き締めによって過熱していた景気にブレーキを適度にかけていたのです。
しかし、リーマンショック以降の11年にわたるアメリカの長期の景気回復局面では、金融緩和や利下げの効果により雇用が回復し、賃金もゆるやかに上昇しました。その結果、消費や住宅投資も堅調に推移しましたが、過去に見られたような景気回復に伴うインフレ率の急上昇も起こらなかったため、経済の温度が適温に保たれた、と考えられています。
この、いわゆる「適温相場」の継続によってアメリカ株は、ヨーロッパ債務危機や中国の景気のスローダウン、米中貿易摩擦などの外部環境の悪化による調整が途中あったものの、長期的な強気相場が続いていました。