最新記事

株の基礎知識

「コロナ禍でアメリカ市場が弱気相場入り」が意味するもの

2020年4月3日(金)19時55分
佐々木達也 ※株の窓口より転載

弱気相場で投資家は

アメリカが強気相場を続けていた期間の日経平均株価を見てみると、2009年3月の安値7,054円から2020年1月の高値24,083円までは約3.4倍になっています。この間に、バブル後の戻り高値24,270円(2018年10月)をつけていますが、史上最高値の38,915円(1989年12月29日)にはほど遠い水準です。

アメリカ株と違い日本株は、この11年間に何度か、指数が直近1年高値から20%以上下落する「弱気相場入り」をしています。

kabumado20200403covid19-chart3-B.png

では、弱気相場に入ったとき、個人投資家はどうすればいいのでしょうか。この期間は株を買ってはいけないのか。強気相場のサインが出るまで待つべきなのか。それに関しては、次のような有名な相場格言があります。


強気相場は、悲観の中に生まれ、懐疑の中に育ち、楽観の中で成熟し、幸福感の中で消えていく

アメリカの著名な投資家、ジョン・テンプルトンの言葉です。弱気相場が本格化し、市場全体が悲観に傾いているときこそ、次の強気相場の起点となることを示唆しています。

リーマンショックを振り返ってみると、2008年9月15日に投資銀行リーマン・ブラザーズが経営破綻しました。その後、信用不安は世界に波及し、アメリカの自動車業界ビッグ3のうち、クライスラーが翌2009年4月に、GMが2009年6月に破産法適用を申請するなど、製造業にも大きな影を落としました。

しかし前述のように、ダウ平均が安値7,054ドルをつけたのは2009年3月。その後クライスラーやGMが破綻しても、これを下回るほど下落することはなかったということです。

雰囲気に流されすぎない

株価が急落する場面では、投資家心理として「とても怖くて買えない」といった雰囲気にもなるでしょうが、まさに「強気相場は悲観の中に生まれていた」ことがここからわかります。

弱気相場も強気相場も、株価を決める重要なファクターである「市場心理」の傾きを表す用語です。弱気相場の中においては過度にリスクを取りすぎないことも重要ですが、上がり続ける相場がないのと同じように、下がり続ける相場もありません。

そのことを念頭に置いて、過度に雰囲気に流されすぎず、市場心理が弱気/強気のどちらかに傾きすぎていないかどうかを常に意識しておきたいものです。

(Chart by TradingView

2020/03/30

[執筆者]
佐々木達也(ささき・たつや)
金融機関で債券畑を経験後、証券アナリストとして株式の調査に携わる。市場動向や株式を中心としたリサーチやレポート執筆などを業務としている。ファイナンシャルプランナー資格も取得し、現在はライターとしても活動中。株式個別銘柄、市況など個人向けのテーマを中心にわかりやすさを心がけた記事を執筆。

※当記事は「株の窓口」の提供記事です
kabumado_logo200new.jpg

cover200407-02.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年4月7日号(3月31日発売)は「コロナ危機後の世界経済」特集。パンデミックで激変する世界経済/識者7人が予想するパンデミック後の世界/「医療崩壊」欧州の教訓など。新型コロナウイルス関連記事を多数掲載。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

原油先物、週間で4カ月半ぶり下落率に トランプ関税

ビジネス

クシュタール、米当局の買収承認得るための道筋をセブ

ビジネス

アングル:全米で広がる反マスク行動 「#テスラたた

ワールド

トルコ中銀が2.5%利下げ、インフレ鈍化で 先行き
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない、コメ不足の本当の原因とは?
  • 3
    113年間、科学者とネコ好きを悩ませた「茶トラ猫の謎」が最新研究で明らかに
  • 4
    一世帯5000ドルの「DOGE還付金」は金持ち優遇? 年…
  • 5
    強まる警戒感、アメリカ経済「急失速」の正しい読み…
  • 6
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    定住人口ベースでは分からない、東京23区のリアルな…
  • 9
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 10
    34年の下積みの末、アカデミー賞にも...「ハリウッド…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 8
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 9
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 10
    ボブ・ディランは不潔で嫌な奴、シャラメの演技は笑…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中