スティーブ・ジョブズがいつも黒のタートルネックだった理由
2017年9月、アップル現CEOティム・クックのプレゼンテーションの際に映し出された故スティーブ・ジョブズの映像 Stephen Lam-REUTERS
<ジョブズがいつも同じ服装だった理由は「意思決定」と関わりがある。そこから得られる「ファイナンス」のヒント>
故スティーブ・ジョブズはいつも同じ服装だったことで有名だ。その理由を解くカギは「質の高い意思決定」にあると、M&Aの最前線で活躍する若き実務家、正田圭氏は言う。
「意思決定を伴わないファイナンスに価値はない。ファイナンスを伴わない意思決定も同じである」を持論とする正田氏は、このたび上梓した『ファイナンスこそが最強の意思決定術である』(CCCメディアハウス)であらゆるビジネスパーソンに向け、ファイナンスを習得し質の高い意思決定を行うための術を伝授している。
そもそも「意思決定」とは何だろうか。そして、それがなぜジョブズの黒のタートルネックとも関わりがあるのか。本書から一部を抜粋し、3回に分けて掲載するシリーズ。第3回は「3章 ファイナンスが最強の意思決定術である理由」より。
※第1回:AI時代に「超高収入」ファイナンスの専門職は生き残れるか
※第2回:仕事も投資も「アセットアロケーション」でほとんど決まる!
ジョブズはなぜ黒のタートルネックを身につけたのか?
意思決定というと、企業の社長や経営陣が事業計画を立てたり、資金を調達する方法を検討したりするときなどに行うもの、というイメージを持っている人が多いかもしれません。
でも、それだけが意思決定ではありません。
誰もが意思決定者なのです。
例えば、朝起きて、冷蔵庫を覗いてどんなものを食べようかと朝食を選ぶのも意思決定です。
朝食なんて些細なことと思うかもしれません。しかし、手当たり次第にそこにあるものを食べている人と、栄養に気をつかってバランスのいいメニューを選んでいる人とでは、1年たち、2年たつうちに健康状態は大きく違ってくるでしょう。
これまでの人生を振り返れば、人はライフステージのあらゆるところで重要な意思決定をしていることがわかります。
高校のときに文系か理系かを選ぶのも意思決定なら、大学を卒業するときに就職先を選ぶのも意思決定です。
その他、結婚、転職、不動産の購入など......その時々の意思決定によって、その後の人生に大きな変化が生じたという経験は誰もがしているはずです。
そして、質の高い意思決定をしたときは、その変化はよい方向に進んだはずですし、逆に質の低い意思決定をしたときは、その変化はとるに足らないものになったか、あるいは自分を窮地に陥れる危機を招いたことでしょう。
ここでいう「質の低い意思決定」とは、「ただなんとなく選んでしまった」とか、「不本意ながら選ばざるを得なかった」といった、自分の意思の働いていない選択を指します。
意思決定の質を高めるのに重要なのは、そのような質の低い意思決定をする機会をできるだけ少なくしていくことに他なりません。