AIやEVが輝く一方で、バブルや不況の影が広がる......ピークアウトする中国経済の真実
DECODING CHINA’S ECONOMY
不動産急落で地方財政逼迫
民間の需要が不足しているときには政府が需要を創出するべきというのが経済学の教科書的な対応だが、中国ではこれがうまくいっていない。というのも、そうした財政出動の主な担い手は地方政府だが、コロナ対策で財政は逼迫している。中国・東呉証券の試算によると、PCR検査の費用だけでも年1兆4500億元(約30兆円)が拠出された。
一方で財政収入は厳しい。中国の地方政府は土地使用権の払い下げ金を主要な収入源としていたが、不動産市場が急落するなか、この収入が大きく減少している。21年のピークからは44%の減少だ。
減った分の収入を補塡しようと、10年以上前の税金未納に巨額の追徴課税を徴収するといった不正行為が多発している。90年代の中国では財源確保のための罰金徴収が横行した。土地払い下げ収入が確保されるようになってからは鳴りを潜めていたが、財政難からかつての悪行が復活してしまった。
光の面だけを強調すれば中国の未来は明るく見え、影の部分だけを見れば悲観論となる。だが、いずれか片方だけ見るのは誤りだ。
好調な輸出の背景には、中国の消費低迷により行き場を失った製品が輸出に回った一面がある。一方、不動産市場の縮小に伴い、投資先を失ったマネーがAIやEVに投じられた。光と影の両面はつながっている。
中国の問題は国内需要の低迷にある。もともと供給が過大で需要が過小だったが、不動産市場縮小でさらに需要が減少したことで、その傾向が強まった。行き場を失った供給が輸出に回っているのだが、今後激しい貿易摩擦を生むことは間違いない。トランプ大統領のアメリカはもちろん欧州や日本など他の国々も警戒感を強めている。
不動産に頼らない形での需要拡大ができるのかが問われているのだが、習近平(シー・チンピン)国家主席に意欲は見られない。むしろ「新しい質の生産力」政策など、さらに供給を拡大する政策に執心している。
改革開放が始まった78年以降の中国は、供給優先の経済政策で成長を成し遂げてきた。さらに製造業の革新はこの10年間、EVや太陽光パネルに代表される大きな成果を生んだ。この成功体験が習と中国共産党を呪縛しているのだ。
(著者の近著に『ピークアウトする中国』〔文春新書、梶谷懐氏との共著〕がある)
『ピークアウトする中国――「殺到する経済」と「合理的バブル」の限界』
梶谷 懐、高口康太 著
文春新書
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[筆者]
梶谷 懐(かじたに・かい)
1970年、大阪府生まれ、神戸大学大学院経済学研究科教授。神戸大学経済学部卒業後、中国人民大学に留学(財政金融学院)、2001年に神戸大学大学院法学研究科博士課程修了(経済学)、神戸学院大学経済学部準教授などを経て、2014年より現職。著書に『中国籍済講義』(中公新書)など。
高口康太(たかぐち・こうた)
1976年、千集県生まれ、ジャーナリスト。千葉大学客員教授。千重大学人文社会科学研究科博士課程単位取得退学。中国経済、中国企業、在日中国人社会を中心に各種メディアに寄稿。著書に『現代中国経営者列伝』(星海社新書)、 『中国「コロナ封じ」の虚実』(中公新書ラクレ)など。
2025年2月11日号(2月4日発売)は「中国経済ピークアウト」特集。人類史上かつてない人口減で「アメリカ超え」に赤信号 [PLUS] DeepSeekの実力
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