AIやEVが輝く一方で、バブルや不況の影が広がる......ピークアウトする中国経済の真実
DECODING CHINA’S ECONOMY
圧倒的な製造力で過去最高の貿易黒字
WTO(世界貿易機関)加盟前後である1990年代末から21世紀初頭にかけて、中国からの労働集約的な工業製品の輸入が急増し、米国内における雇用を減少させたことを「チャイナショック」と言う。マサチューセッツ工科大学のデビッド・オーター教授らの研究では、米国内で200万人もの失業をもたらしたと推計されている。
その直撃を受けたミシガン州やペンシルベニア州はラストベルト(赤さび地帯)と呼ばれ、格差拡大が政治的分断につながり、最終的にはドナルド・トランプ大統領誕生の伏線となった。
当時、中国輸出の主力製品は鉄鋼やガラスなどの原材料、衣料品、電化製品(の組み立て)など付加価値が低い製品が中心だった。競合製品を作っていた先進国の製造業は苦しんだ一方で、工業機械や中核部品、サービスなどを中国に輸出する企業にとっては追い風だった。中国では「8億枚のシャツとボーイング1機の交換」とも言われた。
だが、その状況は既に大きく変わった。前述したとおり、AIやEVといった高付加価値のハイテク産業までも中国は独自にカバーできるようになった。より多くの付加価値が中国に落ちるようになったわけだ。
昨年、中国の貿易黒字は9921億ドルと過去最高を更新した。この数年、地政学的な問題から中国からの輸入を避ける動きも伝えられていたが、圧倒的な製造力でねじ伏せた。