トランプ景気はもって１年、世界経済の低迷と失政で成長にブレーキの恐れ

政府債務の増加に経済成長が追い付くという確証はほとんどない。関税は歳入を多少は増やすかもしれない。しかし、トランプはサービス業のチップ収入や社会保障給付金への課税廃止などコストの高い施策を次々に言い出し、国の債務を約7.8兆ドル増やすという試算もある。

確かに、バイデンとオバマの民主党政権下で大幅拡大した規制の範囲を縮小するなど、2期目のトランプ政権はいくつか改善も行うだろう。

とはいえ、独占禁止法の執行や暗号資産など一部の分野では、より積極的な規制介入が早急に必要だ。バイデン政権は業界のやりすぎを牽制してきたが、トランプは就任初日にリナ・カーン米連邦取引委員会（FTC）委員長を解任すると明言。ゲーリー・ゲンスラー米証券取引委員会（SEC）委員長の後任も発表した。こうした動きは、トランプの選挙戦に多大な貢献をした暗号資産が、監視の緩和を約束されているのではないかという憂慮を招いている。

ヨーロッパの同盟国を脅して国防支出を負担させることにより、アメリカの厳しい財政状況を緩和できる可能性はある。しかし、地政学的な不安定性が高まっている状況では、自国の国防支出も増やさざるを得ないだろう。トランプは交渉戦術として極端な主張をするかもしれないが、NATO（北大西洋条約機構）から実際に脱退することは考えにくい。