人民元下落の観測強まる...トランプ関税で通貨安合戦も
これは投資銀行の間で予想されているレンジの下限であり、中国は今回、関税に対してこれまでより万全の備えを講じる決意だという認識が投資家の間で強まった。
ラボバンクの通貨ストラテジー責任者、ジェーン・フォリー氏は、輸出を重視しがちな中国当局が経済のてこ入れを図ろうとした場合に「人民元安を容認する可能性があるという理屈には非常に説得力がある」と述べた。
激しく急速に下落も
中国にとって複雑な要素は、人民元が対ドルで下落した場合、ドル以外の通貨、特にアジア通貨に対して人民元レートがどの水準に落ち着くかだ。ベトナムなど近隣諸国の多くは、中国製商品を最終加工し、米国の制裁を逃れるための拠点としての重要性が増している。
イーストスプリング・インベストメンツの為替チームのポートフォリオマネジャー、ロン・レン・ゴー氏は、中国が統制の取れた形で段階的に人民元を切り下げると予想しつつも「アジア通貨、とりわけ輸出主導型経済の通貨は実効レートベースで人民元と一緒に調整しそうだ」と言う。
中国の輸出企業は、1ドル=7.5元になれば売り始めることを念頭にドルを貯め込んでいる。しかし同時に、人民元建てでインボイスを発行するなど、為替リスクを根本から回避する方法も追求してきた。人民元が今年、他通貨に対して上昇したことで、そうした動きはさらに強まった。
HSBCのニューマン氏は、中国が人民元を積極的に下落させれば、極端に安い中国製品から産業を守るために他の国々も関税を引き上げて「関税が滝のように降ってくるリスクが高まる」と警告。「他の貿易相手国で反動を引き起こしかねず、中国の利益にならない」と話した。
もちろん、最も大きな不確実性は米国の関税のスピードと規模にある。トランプ氏が急いで直接的な行動を起こすことはない、と予想する向きもいる。
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