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国防に尽くした先に...「54歳で定年、退職後も正規社員にはなりにくい」中年自衛官に待ち受ける厳しい現実

2024年12月4日(水)18時45分
飯田 浩司 (ニッポン放送アナウンサー) *PRESIDENT Onlineからの転載

退職後も「正規」にはなりにくい

それでも、彼ら・彼女らは普段から言動に非常に気を遣っていることが見えてきます。

制度上の理由で早期退職となりますから、その分本来であれば退職金が少なくなってしまいます。勤続20年以上の場合はそれを補う若年定年退職者給付金がありますが、本来は恩給制度等で報いる方法が検討されてしかるべきでしょう。


もちろん、援護サイドも頑張っていて、地方自治体の防災監として採用されるケースも増えてきています。平時には現役時の経験を活かして防災や有事への備えを提言し、非常時には古巣の自衛隊との連携をスムーズに行う潤滑油として働く。

理想的にも見える再就職で、実際ウィン・ウィンの関係なので防衛省・自衛隊サイドも推している施策なのですが、先方の自治体側もない袖は振れぬでなかなか正規職員のポストを用意できないのが難しいところ。

キャリアプランは人それぞれなので、非正規職員となると尻込みするケースもどうしても出てくるようです。

また、民間への再就職となると、そもそも50歳を超えてからの再就職は民間から民間でも難しいもの。採用となると、給料の他に社会保険料の企業負担分も面倒を見なくてはなりません。

恩給の支払いが現実的でないのならば、せめて若年定年退職者には社会保険料の企業負担分は国で面倒を見るぐらいのサポートがあってもいいと思います。

 “偉くなった人” ほど再就職先が見つからない

一方、制服組の中でも一握りのトップが将・将補クラス。このクラスになると、自衛隊独自の再就職あっせんシステムである「援護」を利用することができなくなります。

「いやいや、でも将や将補まで偉くなった人だったら企業が放っておかないでしょう」「それぞれの専門を活かして退職後も活躍してくれるでしょう」。

普通だったらそう思いますが、将・将補クラスとなると一般の公務員とまったく同じで、国家公務員法に基づく再就職に関する行為規制の対象となります。

すなわち、それまでの経験を活かすとなると往々にして当該将官と企業との間で利害関係が生ずることになり、それは現職職員による利害関係企業等への求職活動に関する天下り規制に引っかかることになるのです。

その上、一般の公務員でしたらこのポジションは次がある、このポジションは上がりだといったようなだいたいの退職時期の相場観があります。自衛隊にもなんとなくはあったりしますが、しかし政治情勢や内外の情勢によって、適材適所で突然の辞令ということも少なくありません。

その上、ここまでのクラスになればどの職種にいようとも基本的には激務です。退職ギリギリまで職務に専念しており、再就職活動に時間を割ける人がどれだけいるか、見ている限りはほとんど思い浮かびません。

ある同年代の将補など、「もし私が退職となったら、辞令をもらったその足でハローワークに直行ですよ」と赤裸々に話していました。

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