グローバル企業が「人材をかき集めている」...最強の学問「行動経済学」が、ここまで注目されているワケ
私たちは、性別を聞かれると、「女性はこういうタイプの仕事には向いてないのかな?」と男女に紐づけやすくなってしまう。これを「プライミング効果」と呼びます。さらには、たまたま女性が失敗しただけで、「やはり女性はこの仕事に向いていない」と結びつけてしまうことも。これは「確証バイアス」が働いている状態です。
こうした認知バイアスによって強化された固定観念は、他者だけでなく本人にも影響するんですよ。
ある実験では、数学の問題を解いてもらい、男女の得点差を比較しました。1つめのグループは解く前に性別を尋ねられた。もう1つのグループは何も尋ねられなかった。すると、後者のグループでは男女の得点差はなかったのに対し、前者のグループでは女性の方が男性より得点が低かったのです。
アメリカでも、「女性のほうが男性より数学ができない傾向にある」というバイアスがあります。普段はそう信じていない女性でも、性別を聞かれたことで、そのバイアスを思い出し、「どうせ私にはできないから」という感情が湧き上がってきた可能性がある、と考えられます。
「不確実性回避」をうまく防ぐ「問い方」とは?
──こうしたバイアスにできるだけ対処するためのアドバイスはありますか。
おすすめは、変化を前提にして、変化を促すことです。人間には、リスクの確率が未知な状況を避けようとする「不確実性回避」の傾向があるので、変化を嫌う面がある。だから、考え方や行動を「変わるか変わらないか」に焦点を置くと、「変わりたくない」になりがち。そこで、「AとBどちらに変わるのがいいですか」と、変化の選択肢に焦点を置いて尋ねると、変化しようという発想になりやすいのです。