トランプ前大統領「返り咲きの可能性」が人民元圧迫...投機売りやドル実需で
ジェフリーズのグローバルFX責任者を務めるブラッド・ベッチェル氏は、トランプ氏が大統領に復帰し、共和党が上下両院で多数派を握れば、数カ月で人民元が最大12%下落する可能性があるとみている。
バークレイズのマクロ・FXストラテジスト、レモン・チャン氏は、今年第4・四半期のオフショア人民元は1ドル=7.10元前後と、6月以降の7.00─7.30元というレンジの中心で推移すると予想する。
外貨志向
中国債券の利回りが抑え込まれていることも、人民元の価値を損なっている。
期間10年の米国債利回りは、年2%に過ぎない同期間の中国国債の2倍に上る。
こうした中で中国の輸出業者や投資家は資産を外貨建てに維持。その一部は商業銀行の外貨預金として保有され、9月末時点では8490億ドルに増えた。残りは中国国有企業のドル建て債などの形で置かれている。
インベスコのポートフォリオマネジャー、イフェイ・ディン氏は、国内債利回りがオフショア債の利回りよりすっと低いので、国有企業のドル建て債に中国の買い手からの資金が流れ込んでいると説明した。
さらに米国が関税を引き上げる恐れがあり、人民元に先安観が広がる以上、中国企業は海外資産を急いで環流しようとしていない。
上海の電子部品輸出会社の所有者は、トランプ氏と関税の組み合わせは米金利上昇とドル高を意味すると述べ、香港に持つオフショア口座にあるドル預金をすぐに人民元に転換するつもりはないと明かした。
中国当局も、人民元安を好むように思われる。8月に人民元が一時8カ月ぶりの高値になった場面では、大手国有銀行がドル買いに動き、輸出収入の目減りを防いだとみられる。
IGの市場アナリスト、トニー・シカモア氏は、トランプ氏が大統領に戻って対中関税を約束通り60%に引き上げれば、中国にとってはまずい事態だと分析。「恐らく、だからこそ中国当局は前倒しで金融緩和に乗り出し、財政出動に言及しているのではないか。これらの関税が実行されれば、中国の経済成長には逆風となるので、衝撃緩和の要素が欲しいのだ」と付け加えた。
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