「脱アベノミクス」は困難か...どうなる衆院選後の経済政策
石破首相が年内決着を掲げる防衛費増額の恒久財源確保にも影を落としそうだ。政府は22年末に23─27年度の防衛費を総額43兆円と定め、最終年度までに法人・所得・たばこで総額1兆円を増税する案を盛り込んだが、自民党内の反対で実施時期は定まっていない。財務省関係者は「防衛族の中で石破首相は例外的に増税に理解があったが、自民単独過半数割れならば、党内の増税慎重論に配慮せざるを得ない」と懸念する。
自公でも過半割れの現実味
公明党と合わせた与党では過半数を維持するというのが現時点のメインシナリオとみる向きが多い一方、自公で過半数を割り込む可能性も浮上している。朝日新聞は20日、自民が50議席程度減らして単独過半数を割り込み、自公合わせても過半数を維持できるか微妙な情勢と報じた。
与党関係者によると、自民党内ではすでに国民民主党との連携を模索する議論が出ている。自民党の森山裕幹事長は18日のテレビ番組で「公明党と連立で過半数をしっかりとることが最初の目標だ」としつつ、「政策的に一致することができれば、会派を同じくして日本の発展のために一緒に頑張るということも大事なことだ」とし、第3党との連携を完全に否定はしなかった。
当の国民民主党は連立に参加する意向を否定しているが、大和証券の末広徹チーフエコノミストは「国民民主が議席を伸ばしてキャスティングボードを握る流れとなれば、国民が主張する歳出拡大と金融緩和継続が意識されやすい」とみる。 野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストも「国民民主との連立とならば、よりリベラル色の強い政策となりそうだ」と予測する。
自民単独で過半数なら
報道各社の情勢調査からは自民党が単独過半数を維持する可能性は低そうだが、考え方の近い野党、無所属の議員を選挙後に取り込んで実現するシナリオはある。自民党は派閥の政治資金パーティーを巡る問題で、12人の候補者を公認しなかった。愛知学院大学総合政策学部の森正教授は「当選した『裏金議員』を公認することでぎりぎり単独過半数を確保する可能性もある」と語る。
山梨大学大学院総合研究部の藤原真史准教授は、自民単独で過半数になれば「石破政権として相当な信認を得たことになり、アベノミクスの金融緩和や財政出動の見直しの加速が可能になる」と話す。クレディ・アグリコル証の会田氏は、財政規律の目標を現在の基礎的財政収支(プライマリーバランス)から利払費を含んだ収支黒字化に変化させるなど財政再建に舵を切るとみる。「12月の自民党の税制調査会で石破政権の増税路線が明確になる」と予想する。
(竹本能文、杉山健太郎 編集:久保信博)
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