アメリカ政府が「グーグル帝国」解体に動く...実現は不透明、AI革新にブレーキも
米政府がアルファベット傘下グーグルのインターネット検索における独占的地位の切り崩しに動く。写真は同社のロゴ。8月13日、カリフォルニア州マウンテンビューで撮影(2024年 ロイター/Manuel Orbegozo)
米政府がアルファベット傘下グーグルのインターネット検索における独占的地位の切り崩しに動く。司法省は8日、ブラウザ「クローム」や基本ソフト(OS)「アンドロイド」などの事業を売却させる是正措置を取る可能性があると明らかにした。決着には数年かかる可能性があるが、グーグルの重要な収益源を弱体化するとともに、AI(人工知能)の進歩を停滞させる可能性もあるとアナリストは指摘する。
連邦地方裁判所は8月、グーグルがネット検索で独占的地位を維持しているとの判断を示した。
この判決を受けて司法省が検討している是正措置は、一部事業の売却だけでない。機密性の高いユーザーデータの収集を禁止し、検索結果とインデックスを競合他社にも共有させること、ウェブサイトのコンテンツがAI製品の学習に利用できないようにする選択肢を設けること、裁判所が任命した技術委員会に報告を義務付けることなども検討されている。
こうした案は、「ググる」という言葉を生んだ「グーグル帝国」の本丸に切り込み、事業収益を減らし、ライバルの台頭に道を開くものだ。
DAデービッドソンのマネジングディレクター兼ソフトウエアシニアアナリストのギル・ルリア氏は「プライバシーやデータ蓄積に関する是正措置は、グーグルが収集した全データの共有を認めるか、でなければデータ収集自体をやめるかという選択を迫るものだ。グーグルはおそらく前者を選ぶだろうが、そうなればライバルが力をつけ、新たな競争を生む可能性がある」と述べた。「司法省はグーグルの成功の公式を逆手にして崩そうとしている」とみる。
アナリストからは、AI関連の是正措置はグーグルのビジネスを混乱させる可能性があるとの警告も聞かれる。AI分野では「チャットGPT」を開発したオープンAIや、AI検索エンジンの「Perplexity」などの攻勢を受けている。
調査会社eマーケターによると、米検索広告市場におけるグーグルのシェアは2025年までに、10年余ぶりに50%を下回ると予測されている。
「グーグルとしては、ライバルが増えているAI分野の競争を規制当局によって不利な条件で戦うことは避けたいはずだ」とバーンスタインのアナリスト、マーク・シュムリックは指摘する。
グーグルのライバルで、プライバシーを尊重した検索エンジンを手がける「DuckDuckGo(ダックダックゴー)」の広報担当上級副社長カミル・バズバズ氏は「この枠組みは、単一の是正措置ではグーグルの違法な独占を解消できないという理解に立ったものだ。市場を自由にするには一連の行動的および構造的是正策が必要になる」と話した。
予想される曲折
グーグルの問題は、OS「ウィンドウズ」を巡りマイクロソフトの分割案が浮上した1999年以来、米国の独占禁止法に関する最も大きな影響を持つ事案だ。ただ、業界専門家からは是正措置の実現性は不透明との声も出ている。
テック業界団体「Chamber of Progress」の創設者アダム・コバセビッチ最高経営責任者(CEO)は「ニュース性はあるかもしれないが、法的には非現実的。司法省が提示しようとしている是正措置は裁判所の判決をはるかに超える内容だ。過去の事例に照らせば、訴訟を続けられないだろう」と述べた。
AJベルの投資ディレクター、ラス・モールド氏は、このリスクは以前から認識されていたとし、「投資家は強制的な分割が起こるとは考えていないようだ」と語った。
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