最新記事
株式市場

米ハイテク株投資が一部で恐る恐る再開...強気筋も警戒緩めず

2024年8月9日(金)09時32分
ニューヨーク

世界的な株安で急落した米ハイテク株に恐る恐る投資家が戻り始めている。ただ、一部の銘柄は依然としてバリュエーションが高く、再び市場が急落すれば押し目買いを入れた投資家が痛手を負うリスクがある。写真はニューヨークで3月撮影(2024年 ロイター/Brendan McDermid)

世界的な株安で急落した米ハイテク株に恐る恐る投資家が戻り始めている。ただ、一部の銘柄は依然としてバリュエーションが高く、再び市場が急落すれば押し目買いを入れた投資家が痛手を負うリスクがある。

ハイテク株が多いナスダック100指数は、米経済に対する懸念や円キャリー取引の巻き戻しなどを背景とする世界的な株価急落を受けて、先月付けた最高値から13%以上下落した。


 

これを受けて一部のハイテク株は株価収益率(PER)ベースで割高感が薄らいでおり、これまで投資をためらっていた投資家から見て魅力が高まっている。

S&P500情報技術(IT)セクターの12カ月先予想PERは26.1倍。LSEGデータストリームによると、7月は31.3倍と2002年以来の高水準だった。

それでも、強気な投資家でさえ慎重に動いている。ITセクターのPERはやや低下したものの、依然、過去10年間の平均である20.7倍を大きく上回る。S&P500全体のPERに対するプレミアムは32%で、過去10年間の平均の2倍以上に相当する。

このため、市場が再び混乱した場合、ITセクターは売りが出やすくなる恐れがある。大手IT企業の決算がまちまちなことや、著名投資家ウォーレン・バフェット氏率いる投資会社バークシャー・ハサウェイが保有するアップル株を半分に減らしたことなども、投資家が慎重に動く理由になっている。

ダコタ・ウエルスのシニア・ポートフォリオ・マネジャー、ロバート・パブリク氏は「全てを賭けるつもりはないが、ある程度の買いは入れた」と発言。

同氏は7月初めにエヌビディア、ブロードコム、アマゾン・ドット・コムなどの株式を一部売却したが、ここ数日で一部のハイテク株の買いを再開。「こうした企業の見通しはいずれも変わっていないと思う」と語った。

ナスダック100指数が7月に最高値を付けて以降、エヌビディアは27%近く急落。アマゾンは18.5%、アルファベットも約17%下落している。

これを受け、一部の投資家は直ちに押し目買いを入れた。ゴールドマン・サックスの今週のリポートによると、世界のヘッジファンドは、S&P500指数が一時4.25%急落した今月5日に1日としては過去5カ月で最大規模の買いを入れた。買いはおおむねITセクターに集中し、特に半導体株が買われた。

最近の下落にもかかわらず、ナスダック100指数は年初から6%上昇。強気筋は好調な企業業績を指摘することが可能だ。ITセクターと通信サービスセクターの第2・四半期決算は前年比でそれぞれ19%、28%の増益となる見通しだ。

ホライゾン・インベストメント・サービシズのチャック・カールソン最高経営責任者(CEO)は「投資したい銘柄がある。業績は底堅いとみられ、バリュエーションも改善した。そうなればある程度の資金を再び投資する価値がある」と述べた。

同CEOは、半導体のブロードコムとクアルコムの株式を買い増すかどうか検討中という。

大型ハイテク株を個別に分析すると、PERが過去10年の平均を下回っている銘柄と上回っている銘柄がある。

例えば、メタ・プラットフォームズのPERは21.7倍で、過去10年平均の25倍を下回っているが、マイクロソフトは30倍と、過去10年平均の25倍を上回っている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

訂正-米テキサス州のはしか感染20%増、さらに拡大

ワールド

米民主上院議員、トランプ氏に中国との通商関係など見

ワールド

対ウクライナ支援倍増へ、ロシア追加制裁も 欧州同盟

ワールド

ルペン氏に有罪判決、次期大統領選への出馬困難に 仏
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 9
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中