最新記事
AI

AIは金融に危険なツールなのか?...金融業界で分かれる意見

2024年7月1日(月)19時52分
AI

FILE PHOTO: Figurines with computers and smartphones are seen in front of the words "Artificial Intelligence AI" in this illustration taken, February 19, 2024. REUTERS/Dado Ruvic/Illustration/File Photo

人工知能(AI)をベースにしたシステムの普及を巡って金融サービス業界では、天与の大きな好機と経営者らから歓迎の声が上がっている。一方で、資産運用会社は機密性の高い情報を扱うため、ほかの個人向け事業よりもAI利用に伴う危険性に直面しているなど、見方は分かれている。

米オープンAIの元幹部ザック・カース氏は最近、シカゴで開かれたモーニングスター主催の投資家会議で利用メリットを強調した。例えば、運用担当者が顧客向けに運用資産配分(ポートフォリオ)や貸し付け決定など推奨事項について説明する場合は人間よりも優れている可能性があるという。


 

また、人間がそうした意思決定をする際、潜在意識の中にある偏見が影響を及ぼし得る上、偏見を説明するのが苦手だが「AIを使えばかなりよくなるはずだ」とカース氏。

AIは理論上、コンプライアンスフォームの記入のほか、あまり複雑ではないポートフォリオ構築などルーチンワークの多くを簡素化する。このため金融のプロは対人のやり取りや深い思索が必要な問題に従来よりも時間を振り向けられる。「金融アドバイザーは顧客サービスにもっと時間を費やせる」とモーニングスターのシニア・リサーチ・アナリストのカレン・ザヤ氏は指摘する。

しかし、退職金プランで投資先の資産を調整するといった仕事は、飛行機の座席予約や口座残高確認などと比べて、動きが激しくて目配りが必要なものがもっと多く絡み合っているという。

ザヤ氏は「今のところは、この業界で検討課題になっていると思わないが、われわれが意見を交わした企業はどこもAIをベースにしたシステム導入について相当考え込んでいるし、慎重になっている」と強調した。

米規制当局は現在、金融会社のAI利用に関し一般から意見を募集している。金融サービスへの包括的で公平なアクセスを促進するのが狙いだ。イエレン財務長官は金融でAIを使うと取引コストを引き下げられる可能性があるものの「重大なリスク」を伴うと注意も促している。




[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2024トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20250225issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年2月25日号(2月18日発売)は「ウクライナが停戦する日」特集。プーチンとゼレンスキーがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争は本当に終わるのか

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中