最新記事
日銀

物価に上振れリスク、「遅きに失することなく」適時に利上げ必要──日銀主な意見

2024年6月24日(月)11時43分
日銀

日銀が6月13―14日に開いた金融政策決定会合では、物価の上振れリスクが出てきているとして、次回会合に向けてもデータを注視し「目標実現の確度の高まりに応じて、遅きに失することなく、適時に金利を引き上げることが必要だ」との意見が出ていたことが明らかになった。写真は日銀本店。2017年9月に都内で撮影(2024年 ロイター/Toru Hanai)

日銀が13―14日に開いた金融政策決定会合では、物価の上振れリスクが出てきているとして、次回会合に向けてもデータを注視し「目標実現の確度の高まりに応じて、遅きに失することなく、適時に金利を引き上げることが必要だ」との意見が出ていたことが明らかになった。

国債買い入れ減額については、同会合で具体案を決めるよりも、市場参加者の見方を確認するプロセスを踏んだ方が「よりしっかりとした規模の削減ができる」との意見が出ていた。

日銀が24日、決定会合の「主な意見」を公表した。

<24年後半に向け「値上げの波が再来の可能性」>

追加利上げを巡っては、見通しに沿った物価の推移が続く中、「コストプッシュを背景とする第2ラウンドの価格転嫁によって物価が上振れる可能性もある」として、「リスクマネジメントの観点から金融緩和のさらなる調整の検討も必要だ」との意見も見られた。

一方で、利上げのタイミングは、消費者物価の明確な反転上昇や中長期の予想インフレ率の上振れなどを「経済指標で確認してからで良い」といった意見も出されていた。

個人消費が盛り上がりを欠く中、一部自動車メーカーの出荷停止という想定外の事態が続き、これらの影響も確認する必要があるとして「当面は現在の金融緩和継続が適当だ」との意見もあった。

物価については、賃金と物価の好循環が実現しつつあるが、名目賃金上昇率、予

想インフレ率、サービス価格上昇率などを踏まえると「基調的な物価上昇率はまだ2%に届いていない」との意見が出ていた。

半面、輸入物価の上昇について、現時点で2022年以降のような価格転嫁をもたらすとは考えにくいものの、価格を据え置くノルム(社会的な慣習)の転換もあり「従前より価格転嫁が進みやすく、2024年後半に向けて価格引き上げの波が再び生じる可能性もある」との指摘が出ていた。

為替相場の変動と金融政策運営については、金融政策は「為替の短期的な変動には左右されない」との声や「経済・物価情勢の全体像を見て運営しなければならない」との意見が見られた。

<国債買い入れ減額、「枠組みの作り方なども工夫」との声>

日銀は6月会合で、今後1―2年程度の国債買い入れ減額計画を次回の決定会合で決めることを決定した。

「よりしっかりとした規模」の削減に言及した委員は、イールドカーブ・コントロール(YCC)からの出口が円滑にできた経験も踏まえて、国債買い入れの削減も「削減額やペースのほか、枠組みの作り方などを工夫することで、市場の混乱を起こすことなく削減を行うことができる」と述べた。

国債市場の安定に配慮するための柔軟性を確保しつつ、予見可能な形で「相応の規模」の減額が適切だとの意見も見られた。

日銀は7月9―10日に債券市場参加者会合を開き、国債買い入れの運営について意見を聞く。決定会合では、国債市場で日銀が圧倒的に大きなプレーヤーであることなど大規模緩和の副作用が課題として残っているため「市場と対話しながら、適時適切に、日銀のバランスシートの正常化を進めていく必要がある」との意見が出された。

国債買い入れ減額の中期的な計画を策定して、その計画に沿って淡々と減額を行うことが望ましいが「減額の最適なペースなどを設定する必要があるため、市場との対話も含め、ある程度の時間をかけて慎重に検討すべきだ」との声もあった。買い入れの減額は開始時期や規模次第で経済を下押しし得るとして「市場と対話を図りつつ、経済情勢を点検してから徐々に進めることが必要だ」との指摘も見られた。

今後の国債保有構造のあり方を念頭に「中長期的観点から新たな市場構造を議論していく必要がある」との意見もあった。



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2024トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20241015issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年10月15日号(10月8日発売)は「米経済のリアル」特集。経済指標は好調だが、猛烈な物価上昇に苦しむ多くのアメリカ国民にその実感はない

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

一段の利下げ支持、インフレ緩和続けば=クーグラーF

ビジネス

中国当局者、24年成長目標の達成に自信 市場は一段

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部の難民キャンプ攻撃

ビジネス

アングル:EUでドイツの影響力低下、中国EV関税問
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:米経済のリアル
特集:米経済のリアル
2024年10月15日号(10/ 8発売)

経済指標は良好だが、猛烈な物価上昇に苦しむ多くのアメリカ国民にその実感はない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    キャサリン妃がこれまでに着用を許された、4つのティアラが織りなす「感傷的な物語」
  • 2
    2匹の巨大ヘビが激しく闘う様子を撮影...意外な「決闘」方法に「現実はこう」「想像と違う」の声
  • 3
    もう「あの頃」に戻れない? 英ウィリアム皇太子とヘンリー王子、「兄弟愛」の瞬間の映像に注目が
  • 4
    「核兵器を除く世界最強の爆弾」 ハルキウ州での「巨…
  • 5
    住民仰天! 冠水した道路に「まさかの大型動物」が..…
  • 6
    「11年に一度」のピークが到来中...オーロラを見るた…
  • 7
    ウクライナに供与したF16がまた墜落?活躍する姿はど…
  • 8
    ハマス奇襲から1年。「イランの核をまず叩け」と煽…
  • 9
    愛する息子の食事に薬をかけて...... 中国女優、我…
  • 10
    大型ハリケーン「へリーン」が破壊した小さな町...20…
  • 1
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「自由がないのは気の毒」「野球は超人的」
  • 2
    ウクライナに供与したF16がまた墜落?活躍する姿はどこに
  • 3
    キャサリン妃がこれまでに着用を許された、4つのティアラが織りなす「感傷的な物語」
  • 4
    借金と少子高齢化と買い控え......「デフレ三重苦」…
  • 5
    アラスカ上空でロシア軍機がF16の後方死角からパッシ…
  • 6
    【独占インタビュー】ロバーツ監督が目撃、大谷翔平…
  • 7
    大谷翔平と愛犬デコピンのバッテリーに球場は大歓声…
  • 8
    NewJeansミンジが涙目 夢をかなえた彼女を待ってい…
  • 9
    羽生結弦がいま「能登に伝えたい」思い...被災地支援…
  • 10
    ウクライナ軍、ドローンに続く「新兵器」と期待する…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「自由がないのは気の毒」「野球は超人的」
  • 3
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは...」と飼い主...住宅から巨大ニシキヘビ押収 驚愕のその姿とは?
  • 4
    ウクライナに供与したF16がまた墜落?活躍する姿はど…
  • 5
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレ…
  • 6
    漫画、アニメの「次」のコンテンツは中国もうらやむ…
  • 7
    ウクライナ軍、ドローンに続く「新兵器」と期待する…
  • 8
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢…
  • 9
    エコ意識が高過ぎ?...キャサリン妃の「予想外ファッ…
  • 10
    キャサリン妃がこれまでに着用を許された、4つのティ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中